研究概要 |
本研究の目的は, 次世代光メモリとして期待されるホログラフィックメモリの記録密度を飛躍的に向上させることにある. これを踏まえ, 当該年度は, 「①記録媒質の均一な活用を可能にする多層化コリニアホログラフィックメモリ, ②ホログラフィックメモリのノイズを大幅に低減可能にするデジタル画像拡散技術, ③多値振幅変調と多値位相変調を組み合わせた空間直交振幅変調信号を生成可能にする空間クロスモジュレーション法」をそれぞれ提案・検討した. ①数値解析によって, 約100層のホログラム多層化が原理的に実現可能であることを示し, 多層化コリニアホログラフィックメモリの潜在力を明らかにした. さらに, 数値解析によって, 層数が2層の場合に最も高い媒質利用効率が得られ, 約2倍の記録密度改善が可能になることを明らかにした. ②デジタル画像拡散技術は, ランダムディフユーザのビーム拡散特性と位相共役光の時間反転性を融合させることでページ間クロストークの空間的な分離を可能にする. 数値シミュレーションによって, 本技術は従来のホログラフィックメモリにおける記録密度を約5倍以上改善できることを示した, ページ間クロストークを低減するための有効な打開策がない現状において, この結果ほ泳ログラフィックメモリの研究者に高い評価を受けた. ③空間クロスモジュレーション法は, 光波における位相の重要性に着目したものであり, ランダムディフユーザによって生成される散乱位相波面から任意の光複素振幅分布を再生できる. 数値シミュレーションによりジ従来の計算機合成ホログラムと比べて, 本方式は, 空間解像度の点において約16倍, 回折効率の点において約4倍向上できることを示した. 本手法は, ホログラフィックメモリに加えて, 3Dディスプレイや生体計測に応用できる点で大きな意義がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の前半は, 当初の計画通り, ①記録媒質の均一な活用を可能にする多層化コリニアホログラフィックメモリと②ホログラフィックメモリのノイズを大幅に低減可能にするデジタル画像拡散技術についての研究を進めた. 数値解析と実験の両面から両提案手法の特性評価を行い, これらの結果を学術論文に発表している. 当該年度の後半は, ホログラフィックメモリの記録容量の更なる拡大を目的に, 空間直交振幅変調信号の生成を可能にする空間クロスモジュレーション法を提案・検討した. 以上の理由により, 現在までの本研究の到達度は, 当初の計画以上に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 画像処理ツールOpen CVを用いたソフトウェアを開発し, ホログラフィックメモリの実験系を全自動化する. これにより, 高精度かつ効率的な実験を保証する. 自動化された実験系を用いて, ページデータの多重記録再生実験を実施し, これまでの数値解析結果の実験的裏付けを行う. また, 開発したソフトウェアに超並列演算処理を可能にするCUDA GPU技術を導入することで, デジタル画像拡散技術におけるデジタル処理に要する時間を大幅に短縮化する.
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