2年目までに、血管構造の作製から、血管構造を持った肝臓組織の作製に移行するために、iPS細胞から誘導した肝臓の細胞を用いこれまでの送液培養に加える事によってその活性を評価した。この時の、アルブミン濃度とアンモニア濃度の変化をELISA で測定した。その結果、培養によっても分化が進み成熟した肝臓細胞へと近づいていた。 今年度はこれまで作製した肝臓組織の有用性を評価するために、これまでに作製してきた肝組織を、実際にマウスに移植することによって、肝疾患治療に有用であるかを評価した。まず、肝組織をクラニアルウィンドウに移植し、組織内に血管構造が侵入することを確認した。一方で、送液可能な血管構造に流れ込むには時間がかかるため、これまで作製してきた血管構造を有効に活用できていないと判断した。そこで、マウスを開胸し、マウス門脈とデバイスを直接接続し、吻合移植する移植することを発想した。これにより、すみやかに組織内に血液が流れ込み、作製した肝組織に酸素が供給できることを確認した。また、デバイスを皮下に埋め込むことによって短期間であれば、マウスの体内へと留置することも可能であることを証明した。更に、ヒト肝細胞をデバイスに充填し、移植したところマウス血液からヒトアルブミンが検出された。以上のように、血管構造を備えた肝組織の作製法を実現できたことは、この分野に於いても画期的であり、本手法は膵臓などの他の多くの重要な臓器に利用できる可能性が高いことから、今後の当該分野の展開にも寄与できる技術であると評価できる。この研究に関係し、国内の学会1件(再生医療学会)国際学会3件で発表した。特に後述の再生医療に関する学会である「Targeting liver disease」で研究成果を発表し、これらの結果の一部を学術論文「PLOS ONE」に報告した。
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