研究概要 |
当該年度においては, 1) 2次元微小構造内でのモータ運動状態解析, および2) 3次元微小構造内でのアッセイ手法確立, を目標に研究を行った. 1)については, 微小管アレイ上を運動するキネシン・ダイニンの位置を, 画像処理を用いて数10nmの精度でトラッキングするとともに, 微小管とその位置制御に必要な溝構造の位置についても高精度で位置の同定を行い, これらの位置関係がモータタンパク質の運動に与える影響について検討した. この結果については2013年5月に学会発表を行った. 2)については, μmスケールのトラック内に微小管アレイを作成して, キネシンを導入した後にトラックの天井部を閉鎖することでチャネル構造を形成し, 上面が閉鎖された構造内でのモータタンパク運動系を構築した. チャネル中をキネシンが一方向に運動することで時間経過に伴うキネシン分布の偏りが観察され, 閉鎖構造中でのモータタンパク質を利用した物質輸送の可能性が示された. これらの結果については, 2013年12月に国内学会で, 2014年1月に国際学会で発表を行った. また, トラック構造閉鎖に基づいたモータタンパク質実験系の再現性および拡張性を高めるため, 空気圧駆動のバルブを組み込んだマイクロ流路デバイスの開発を行った. デバイス中で圧力印加により流路構造を変形させ, トラック構造上面を閉鎖させることでチャネル構造を形成した。これまでに, チャネル内での微小管運動・チャネルを介した能動的な微小管移動を実現できている. この実験系をさらに拡張することで, 3次元的な構造を用いたモータタンパク質の運動制御, および物質輸送系の構築につなげられると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次目標として設定した, 2次元微小構造内でのモータ運動状態解析, および2)3次元微小構造内でのアッセイ手法確立, について一定の成果を得ることができた, これらの成果に基づいて研究を進展させることで, 26年度・27年度の研究目標も達成できると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
25年度に研究を行った3次元微小構造内でのモータタンパク質アッセイ手法にもとついて, キネシン・ダイニンによる能動的な物質輸送を行う実験系を確立する. 具体的には, これまでに開発した微小流路デバイスにおける実験系を拡張し, 微小管を固定したマイクロチャネル内で実験を行う. チャネル内で観察された輸送現象より, 3) 3次元微小構造内での運動解析, 4) 構造制約下でのモータによる輸送現象モデル化, を行い, 最終的な目標であるデバイスの定量的な設計手法構築を目指す.
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