研究課題/領域番号 |
13J01836
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 和也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノトランスポート / 微小管 / キネシン / マイクロ流体システム / モータタンパク質 / PDMS |
研究実績の概要 |
当該年度においては,初年度において実証した1μmスケールのマイクロチャネルを空気圧駆動のバルブを用いて動的に形成するデバイス内でのキネシン・微小管アッセイを確立し,マイクロチャネルによって隔離された2つの領域間での微小管の移動を観察・解析した.開発したデバイスは2層のシリコンゴムとPDMSとガラス基板から構成されており,ガラス基板と下側のPDMSメンブレンで形成された流体チャネルの天井を上側のPDMSスラブに形成された制御チャネルで加圧することで,流体チャネルを閉鎖し流れを制御する.また,チャネルの底部ガラス面にフォトリソグラフィで形成された溝構造を同様のバルブ動作によって閉鎖することで,幅・高さが溝構造の大きさに対応したマイクロチャネルを形成できる.デバイス内にキネシンを固定してマイクロチャネルを形成した後,両端のうち片方のみに微小管とATPを含んだ溶液を導入することで,マイクロチャネル内での安定したアッセイを確立するとともに,マイクロチャネル中を微小管が能動的に運動することでチャネルっを介した反対側の領域へと微小管が移動していく実験系を実現した.微小管分布の時間変化についての解析結果と,マイクロチャネル内での圧力駆動流および拡散による物質移動について比較・考察した結果,マイクロチャネルによって拡散・圧力駆動流による物質移動を抑制し,微小管の能動的な運動によって分子レベルの輸送が可能であることを示した (図2).また,デバイスに窒素ガス流路を付加することによって溶液中の活性酸素種を減少させることで,従来報告されてきたPDMSデバイス内での実験に比較して運動性を長時間維持できることを示した. これらの結果について,国内学会2件,国際学会1件,論文1件の発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度においては当初計画を達成するために不可欠な,動的に3次元マイクロチャネルを形成するマイクロデバイスの作成およびこれを用いたキネシン・微小管アッセイを確立した.安定したアッセイを行える実験系の構築により,流路デバイス内にマイクロチャネルによって隔てられた2つの領域を形成し,それらの間での微小管運動を定量的に評価することができた.また,デバイスに窒素ガスの供給チャネルを追加することで,酸素透過性の高いPDMSデバイス内でのモータタンパク質利用において問題とされてきた失活の速さを抑制できた.得られた知見,実験技術に基づいて研究目標を達成することができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
1)マイクロチャネル内で固定した微小管上でのキネシン運について研究を進める.マイクロチャネル内でのキネシンによる輸送では,溶液全体の体積に対して基板表面の比率が大きくなることから,溶液中に存在するキネシンのうち,基板に固定された微小管上で運動効率が向上することを確認している.この実験系の再現性,安定性をさらに向上させるとともに,運動系による輸送の定量的評価,モデルの確立を行う.これらの結果から得られた知見を用いて,分子スケールの輸送系として利用するデバイス,実験技術の確立および輸送系の設計論確立を目指す.
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