当該年度においては、これまで知られていた「片側q-超幾何級数」に関する接続問題の研究を押し進めた。 より具体的には、前年度まで2階q-差分方程式の解として現れるq-特殊函数を中心に扱っていたものを、より高階化したq-差分方程式を考察することで、接続係数がいかに与えられるかを示した。この一連の研究においては、発散級数を扱う必要があり、さらに既存の道具だけでは接続係数が求められない場合もある。従って、いままでの計算手法をより一般化することで、前述の高階q-差分方程式の解として現れる発散級数の接続公式を明示的に与えることに成功した。 また、問題そのものの拡張にも成功している。元来「片側q-超幾何級数」と呼ばれる函数族を扱っていたが、これを一般化した「双方向q-超幾何級数」と呼ばれる研究対象も知られている。この函数族はしばしば発散級数で与えられるため扱いが難しく、これまであまり関係式が知られていなかった。 これらの双方向q-超幾何級数に対して接続問題の問題意識からアプローチし、前述で得られた一般化された計算手法を用いることでq-Stokes係数と呼ばれる量をいくつか具体的に決定した。また、古典極限を同時に与えることで、これまで全く手つかずだった「双方向超幾何函数」に対して接続公式を与えた。 これらに関係する研究として、原点と無限遠点の間の接続関係式だけでなく、原点近傍の双方向級数と原点近傍の片側級数の関係も与えることに成功した。
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