中性子過剰核の特異な構造を通じた核子間対相互作用の解明

2013 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13J01876
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 西畑 洸希 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
• キーワード: 不安定原子核 / 中性子過剰核 / 放射線計測 / Mgアイソトープ

研究概要

本研究では中性子過剰な原子核である^<31>Mgの崩壊様式を詳細かつ精密に決定することによって、中性子過剰な質量領域の原子核での核子間の相互作用についての知見を深めることを目的としている。^<31>Mgを含むその周辺核は、中性子数20の魔法数の消失をはじめ、安定な原子核の構造を非常によく説明してきた殻模型では全く予見していない現象が次々に発見されており、「Island of Inversion」と呼ばれ様々な議論を呼んでいる原子核領域である。この領域の原子核構造を詳細に調べ、安定核と中性子過剰核での相互作用の違いを明らかにすることは、この領域だけでなく全原子核における原子核構造の統一的な理解の大きな一歩である。今年度はカナダで予定されている^<31>Mgの構造解明実験遂行のために必要な装置開発や様々な検出器や回路のテスト・メンテナンスなどを行った。^<31>Mgの構造解明には中性子の測定が非常に有効であることが新たにわかり、中性子検出器のテストも同時に行った。昨年12月には大阪大学核物理研究センターにおいて不安定核ビームを用いた中性子検出器の予備実験も行った。予備実験後すぐに1ヶ月間TRIUMFに滞在し、実際に開発した装置や検出器・回路系の組み上げを行った。その過程で必要となった装置などの改良・開発などもほぼ終了し、26年の^<31>Mgの実験のための事前準備を25年度内にほぼ完了させることができた。26年3月よりTRIUMFに滞在し、新たに製作した装置・検出器の組み上げや現地の研究者と実験実施のための細かな調整を行っている。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度^<31>Mgの構造解明実験を実施する予定であったが、TRIUMFでの^<31>Naのビームタイムが来年度に割り当てられたため。しかし、現在検出器系のアップグレードを実施中であり、当初の予定よりもデータの収集効率を向上できる見込みである。

今後の研究の推進方策

2013年12月を予定していた^<31>Naのビームタイムが2014年8月となったため、^<31>Mgに関するデータの取得に遅れが生じる見込みであるが、その間検出器系のアップグレードを実施中である。特に今まではガンマ線、ベータ線のみを測定する予定であったが、^<31>Mgの構造解明には中性子の測定が非常に有効であるということが新たにわかり、中性子も検出可能な検出器システムを新たに構築中である。中性子検出器を用いた予備実験は大阪大学核物理研究センターにおいてすでに完了しており、現在は現地での動作テスト・組み上げ作業を残すのみである。

研究成果

• [雑誌論文] Nuclear structure explored by β-delayed decay spectroscopy of spin-polarized radioactive nuclei at TRIUMF ISAC-1 (2014)
  • 著者名/発表者名: T. Shimoda, K. Tajiri, K. Kura, A. Odahara, M. Suga, Y. Hirayama, N. Imai, H. Miyatake, M. Pearson, C. D. P. Levy, K. P. Jackson, R. Legillon, C. Petrache, T. Fukuchi, N. Hamatani, T. Hori, M. Kazato, Y. Kenmoku, T. Masue, H. Nishibata, T. Suzuki, A. Takashima, R. Yokoyama
  • 雑誌名: Hyperfine Interactions 巻: 225 ページ: 183-191
  • DOI: 10.1007/s10751-013-0895-5
  • 査読あり
• [雑誌論文] Shape evolution in ^<116,118>Ru : Triaxiality and transition between the O (6) and U (5) dynamical symmetries (2013)
  • 著者名/発表者名: P. -A. Soderstrom, G. Lorusso, H. Watanabe, S. Nishimura, P. Doornenbal, G. Thiamova, F. Browne, G. Gey, H. S. Jung, T. Sumikama, J. Taprogge, Zs. Vajta, J. Wu, Z. Y . Xu, H. Baba, G. Benzoni, K. Y. Chae, F. C. L. Crespi, N. Fukuda, H. Nishibata, 他
  • 雑誌名: Physical Review C 巻: 88 ページ: 024301-1-10
  • 査読あり
• [雑誌論文] Isomers in ^<128>Pd and ^<128>Pd : Evidence for a robust shell closure at the neutron magic number 82 in exotic Palladium isotopes (2013)
  • 著者名/発表者名: H. Watanabe, G. Lorusso, S. Nishimura, Z. Y. Xu, T. Sumikama, P. -A. Soderstrom, P. Doornenbal, F. Browne, G. Gey, H. S. Jung, J. Taprogge, Zs. Vajta, J. Wu, A. Yagi, H. Baba, G. Benzoni, K. Y. Chae, F. C. L. Crespi, N. Fukuda, H. Nishibata, 他
  • 雑誌名: Physical Review Letters 巻: 111 ページ: 152501-1-5
  • 査読あり
• [雑誌論文] Spectroscopy of ^<135>La (2013)
  • 著者名/発表者名: R. Leguillon, H. Nishibata, Y. Ito, C. M. Petrache, A. Odahara, T. Shimoda, N. Hamatani, K. Tajiri, J. Takatsu, R. Yokoyama, E. Ideguchi, H. Watanabe, Y. Wakabayashi, K. Yoshinaga, T. Suzuki, S. Nishimura, D. Beaumel, G. Lehaut, D. Guinet, P. Desesquelles, D. Curien, A. Astier, T. Konstantinopoulos, T. Zerrouki
  • 雑誌名: Physical Review C 巻: 88 ページ: 044309-1-7
  • 査読あり
• [雑誌論文] Study of collisions of ^<136>Xe + ^<198>Pt for the KEK isotope separator (2013)
  • 著者名/発表者名: Y. X. Watanabe, Y. Hirayama, N. Imai, H. Ishiyama, S. C. Jeong, H. Miyatake, E. Clement, G. de France, A. Navin, M. Rejmund, C. Schmitt, G. Pollarolo, L. Corradi, E. Fioretto, D. Montanari, S. H. Choi, Y. H. Kim, J. S. Song, M. Niikura, D. Suzuki, H. Nishibata, J. Takatsu
  • 雑誌名: Nuclear Instruments and Methods in Physics Res earch Section B 巻: 317 ページ: 752-755
  • 査読あり
• [雑誌論文] Production cross section measurements of radioactive isotopes by BigRIPS separator at RIKEN RI Beam Factory (2013)
  • 著者名/発表者名: H. Suzuki, T. Kubo, N. Fukuda, N. Inabe, D. Kameda, H. Takeda, K. Yoshida, K. Kusaka, Y. Yanagisawa, M. Ohtake, H. Sato, Y. Shimizu, H. Baba, M. Kurokawa, T. Ohnishi, K. Tanaka, O. B. Tarasov, D. Bazin, D. J. Morrissey, H. Nishibata, 他
  • 雑誌名: Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B 巻: 317 ページ: 756-758
  • 査読あり