研究課題/領域番号 |
13J01898
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西山 直毅 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 反応表面積 / 溶解 / 岩石-水相互作用 / 水不飽和状態 / 水膜 / 反応-輸送モデル / 砂岩 / 電気二重層 |
研究概要 |
岩石間隙における鉱物の溶解・沈殿、元素の吸脱着等の化学反応を定量的に扱う上で、鉱物-水反応表面積の評価は重要である。地下水面よりも上方では、間隙中に水と空気が混在する。このような水不飽和状態では、鉱物表面の一部は水との接触が制限され、反応に寄与しない可能性がある。そこで本研究では、間隙中の水量(水飽和率)の減少が若石の反応表面積に及ぼす影響を評価した。 水飽和・不飽和状態の石英砂岩コアに水を浸透させ、透過溶液の流量とSi濃度から溶解量を調べた。また、砂岩間隙中の水と空気の分布を可視化するために、メチレンブルー溶液の浸透実験も行った。その結果、飽和状態と不飽和状態の溶解量にほとんど違いは見られず、反応表面積は水飽和率の影響を受けないことが明らかとなった。これは、空気で満ちた間隙の壁面は水膜で濡れており、水膜を介して石英の溶解と溶出Siの輸送が起こったことを示している。また、水膜中のSi濃度は石英の平衡濃度よりも十分に薄かったことも示唆された。 実験結果を理論的に裏付けるために、水膜の厚さと水膜中の溶解-輸送現象を定量的に扱うモデルを構築した。モデルを石英砂岩の場合に適用したところ、水膜中の溶出Siの輸送は十分に速く、Si濃度は低く保たれることが示された。さらに、モデルを拡張し、様々な鉱物組成、粒径、間隙径をもつ岩石の不飽和溶解特性を予測するダイアグラムを得た。これらの結果は、国際学術雑誌にて発表した。 鉱物表面上で水膜が安定に存在できるのは、電気的斥力の働きによる。この斥力は、鉱物表面と空気-水界面の電荷やイオン強度による影響を受けるため、水膜の役割を考える上で表面電荷特性の理解が重要である。そこで、シリカの表面電荷とpH、イオン強度、間隙径との関係を実験的に調べた結果、これらはPoisson-Boltzmann方程式によっておおまかに関連付けられることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究の目的」である水飽和率が鉱物-水反応面積に及ぼす影響の評価を、透水溶解実験を行うことで達成し、成果を学術雑誌に発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、間隙構造や鉱物組成の異なる岩石を用いた透水溶解実験を行い、水飽和率と鉱物-水反応面積の関係調べる。得られた実験結果と昨年度に構築したモデルとの比較を通して、間隙構造・水飽和率・鉱物-水反応面積の関係の総合的な理解を目指す。
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