研究課題/領域番号 |
13J01924
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河添 好孝 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ミスマッチ修復 / DNA複製 / DNA修復 / ツメガエル卵抽出液 |
研究概要 |
ミスマッチ修復はDNA合成エラーを修復する反応であり、突然変異や発がんの抑制、種や個体の維持に大きく寄与する。ミスマッチ修復は新生鎖に生じた合成エラーを修復する機構であるため、DNA合成マシナリーと何らかの形でクロストークするはずである。しかし、どのような反応を介して、ミスマッチ修復機構が新生鎖を識別するのかよくわかっていなかった。DNA合成に必須の因子のPCNAは、DNAポリメラーゼをDNA上に繋ぎ止めるスライディングクランプとして機能するだけではなく、ミスマッチ修復においても様々な段階に関与する。私はこれまでに、ミスマッチ修復機構がPCNAのDNA結合の方向性を認識することで新生鎖を識別することを明らかにした。PCNAはミスマッチ修復因子(MutSミスマッチ認識因子、MutLエンドヌクレアーゼ)と相互作用することが報告されているが、その相互作用がミスマッチ修復にどのように寄与するのか、またその生理的な役割は分かっていない。 本研究では、ツメガエル卵核質抽出液(NPE)を用いてPCNAがミスマッチ修復に果たす役割の解明を目指した。ミスマッチ修復因子とPCNAの相互作用が、PCNAのDNA結合の方向性の認識に機能する可能性を検討した。PCNAとの相互作用を失ったMutLの変異体ではミスマッチ修復が見られなくなった。この結果は、PCNAとMutLの相互作用が鎖の識別を規定することを示す。また、MutL除去NPE (MutSは含む)ではgap修復後の新生鎖識別が可能な時間が大幅に伸長した。さらに、この反応はMutSのPCNA相互作用ドメインに依存していた。以上の結果は、MutSはPCNAをDNA上に留め、新生DNA鎖の記憶を固定する反応の存在を強く示唆する。この反応は、MutLがDNA上にリクルートされるまで、新生鎖識別可能な時間を引き延ばしていると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミスマッチ修復因子とPCNAの相互作用に着目した新生鎖識別反応の解析は計画以上の進展があった。本研究はすでに、これまでの研究結果も含め、論文投稿準備にとりかかっており、今後は、PCNAがどのようにしてDNA複製とミスマッチ修復を協調的に制御しているのか解析を進める予定である。また、新生鎖識別反応についても変異体も用いた再構成実験を行うことでより詳細に解析することが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
新生鎖識別反応の解析は予定以上に進展している。今後はPCNAによる鎖識別の分子機構を解明するため、相互作用の欠損が報告されているミスマッチ修復因子を用いて、PCNAによる鎖決定反応の再構成とその機構の理解を進めていく予定である。また、NPEを用いてDNA複製を試験管内で再現し、人為的にミスマッチを誘導する。その際に、ミスマッチ修復機構が生理的なDNA合成の場でどのように新生鎖を識別し、どのように進行するのか解析を進める。
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