研究課題/領域番号 |
13J01924
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河添 好孝 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミスマッチ修復 / DNA修復 / ツメガエル卵抽出液 |
研究実績の概要 |
ミスマッチ修復(MMR)機構は、DNAポリメラーゼが誤って取り込んだ塩基をDNA合成後に修復することで、正確なDNA複製に大きく寄与する。誤った情報を持つ塩基は新しく合成された鎖の塩基なので、MMR機構は新生鎖を識別して修復する。新生鎖識別は、DNA合成の進行につれて困難になるはずなので、MMR機構はDNA複製機構とクロストークする必要があると考えられている。私は、これまでにツメガエル卵の核質抽出液(NPE)を用いて、DNA合成に必須の因子のPCNAが、MMRの鎖特異性を決定することを明らかにした。PCNAはMMR因子と相互作用するが、相互作用を介したPCNAの機能や、真核生物MMR機構がDNA合成後にどの程度の期間、修復する鎖を識別できるかについてはほとんど理解されていない。 MutSαミスマッチ認識因子を構成するMsh6はPCNA相互作用部位(PIP-motif)をもち、ミスマッチ認識ドメインとPIP-motifは天然変性領域によって繋がれている。私は、これら領域が、修復する鎖の特異性の保持に寄与する可能性を考えた。MutS存在下ではDNA上のPCNAの解離が非常に遅くなり、それと対応して、MMRの鎖特異性の保持時間も伸長した。さらに、この反応にはMutSαの天然変性領域が重要な働きをしており、その領域内ではPIP-motifが必須の働きを示した。以上の結果は、MutSαは天然変性領域とその先端に存在するPIP-motifを介してPCNAのDNAからの解離を阻害することでMMRが可能な時間を延長することを示唆する。PIP-motifの変異はMMRの効率に部分的な欠損を示すことが知られており、今回発見した機構は、極めて高い正確性が必要とされるDNA複製の正確性を維持するために必須の反応であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は修復する鎖の特異性を保持するメカニズムについて、MutSαのどの領域が、どの程度寄与するのか明らかにするため、変異体を用いた解析を進めた。それにより、PIP-motifならびに天然変性領域の「記憶」に対する機能を明らかにできた。並行して、論文投稿に向けたデータ収集ならびに整理を行った。 今後は新生DNA鎖の「記憶」を保持する反応の生体内における重要性や、鎖特異性を決定するメカニズム(PCNAのDNA結合の方向性をどのように認識するか)についてのさらなる解析が必要となると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
修復の鎖特異性を決定するメカニズムに関しては、MMR因子がどのような機構でPCNAのDNA結合の方向性を認識しているのか明らかにするために、修復される鎖を決定するMutLα活性化までの段階を再構成する。さらに、変異体を用いた解析を進めることで詳細に解析を進める予定である。 また、鎖特異性を保持するメカニズムは、生体内やDNA複製における重要性を明らかにするため、出芽酵母を用いて突然変異の発生頻度やMMR因子の局在等を解析していきたい。また、NPE系を用いてプラスミドDNAを複製させ、直接、シークエンス解析することで変異の導入を調べることも計画している。
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