研究課題/領域番号 |
13J01955
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小西 篤 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 鋳型プライマー / 逆転写の正確性 / 逆転写反応 / 耐熱性 / 部位特異的変異導入 / M旺V逆転写酵素 |
研究概要 |
Dr. Menéndez-Arias (Centro de Biologia Molecula "SeveroOchoa", Madrid, Spain) のもとで指導を受けた(6月1-30日)。帰国後、実験環境を整え、実験系を立ち上げた。スペインで学んだクエンチ・フロー法を用いて逆転写反応を数十ミリ秒単位で制御する必要がある測定法については、反応速度論を駆使することにより、同法を用いない新規な測定法を構築した。正電荷導入によるRTの耐熱化のメカニズムを検討するため、3'末端を蛍光標識したプライマーを用いて、耐熱型モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV RT)であるE286R、E302K、L435Rの鋳型プライマー(T/P)との親和力を評価した結果、変異E286→R、L435→Rは親和力を上げることが示唆された。しかし、野生型MMLVRT (WT)の解離定数の値は、^<32>Pを指標として求めた値の24倍であり、大きく乖離した。したがって、プライマーの3'末端を蛍光標識することでRTとT/Pの親和力に影響が及んだものと考えられたので、蛍光を指標とした親和力の評価は中断した。現在、^32Pを指標とした方法により親和力の評価を試みている。CDスペクトルの222nmにおける平均残基モル楕円率[θ]_<222>を指標として、耐熱型MMLV RTの融解温度(T_m)を求めた。T/P添加によるWT、E286R、L435R、E302Kの△T_mは14.2、15.9、12.6、14.1℃であり、E286R>WT=L435R>E302Kの順であった。^<32>Pで標識した鋳型RNAを用いて耐熱型MMLV RTのRNase H活性を測定した。RNase H活性はWTでは反応開始から15秒後には検出されたのに対し、耐熱型MMLV RTでは40分後でも検出されなかった。このことから、耐熱型MMLV RTは、RNase H活性をもたないと考えられた。MMLV RTの耐熱性とRNase H活性には相関関係があると考え、現在、様々な条件でRNase H活性の評価を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、耐熱化のメカニズムを調べるために、蛍光を指標として耐熱型MMLV RTと鋳型フライマーの親和力を評価する予定であった。しかし、この方法では親和力を正しく評価できなかったので、^<32>Pを指標とした新規評価系を構築することが必要となったため、達成度がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画と異なり、耐熱型MMLV RTはRNaseH活性をもたないことを見出し、MMLV RTの耐熱性とRNase H活性には相関があると考えた。このことはMMLV RTの耐熱化のメカニズムを解明し、さらなる耐熱化を進める上で重要な手掛かりになりうる。したがって、今後も耐熱型MMLV RTのRNase H活性について詳細な解析を行う予定である。また、MMLV RTの逆転写の正確性の向上の研究は、当初の計画通り遂行する予定である。
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