研究課題/領域番号 |
13J02001
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 麻樹子 京都大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 二次イオン質量分析法 / 大気圧化学イオン化 / 高速重イオンビーム / スパッタリング / 生体試料 / 脂質 / 揮発性 / 検出限界 |
研究概要 |
本研究課題は、大気圧下で高感度・高分解能での界面分析を実現するための、スパッタ粒子大気圧化学イオン化質量分析法の開発を目的とするものである。初年度となる本年度は、装置の設計、一次イオンビームの大気圧下への引き出しおよび収束に関する検討を行った。 本研究で開発する装置はおおまかに、イオンビーム部、試料室部、差動排気部、質量分析部より成る。このうち、イオンビームには高速重イオンビーム、質量分析部には直交加速型飛行時間質量分析器を用いるが、この2点は既存のものを利用するため、新しい設計等は必要としない。装置設計において特別な配慮が必要となる点は、試料台周辺部および大気圧下でイオン化した直後に隣接する真空チャンバへの輸送部の機構である。この部位の設計が、分析法としての感度を大きく左右する極めて重要なポイントとなると考えられる。一次イオンビームの大気中への引き出しおよび収束にあたっては、スパッタリングに充分なビーム量を確保するため、引出部と試料とは数㎜以下で近接している必要がある。本年度試作した試料室では、一次ビーム引出部と試料台の距離が4㎜、さらに、試料から放出された二次イオンの充分な輸送効率を確保するため、試料台と二次イオン引出部との距離を約3㎜とした。また、一次イオンビームの収束とビーム電流量の確保のため、四重極レンズを用い、ビームとレンズ間の光軸調整のために新たに偏向電極を設計・導入した。この新しい試料室を用いて、次年度以降、試料室の真空度と一次イオンビーム電流値の関係および、試料室の真空度と二次イオン輸送効率の関係について検討・最適化を行っていく。 加えて、高速重イオンを一次イオンビームとした二次イオン質量分析法を用いて、生体試料分析に向けた基礎検討を行った。具体的には、試料室を低真空に保っての揮発性試料測定に関する検討と、脂質モデル試料を用いた検出限界の検討である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究課題遂行の軸となる高速重イオンの生成を行うための加速器が、耐震改修工事のために半年間休止したが、その間に低真空測定のための新しい試料室の設計・製作を行い次年度以降に繋がる成果を上げた。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマソフトイオン化法および高精度・高感度二次イオン検出系の開発を行う。 二次イオン検出系に関しては、大気圧環境下にある試料室から、差動排気プロセス用い、最終的に質量分析部では10^(-5)Pa程度の真空度を達成する必要がある。このうち、約100Paから質量分析部までは既存の排気系をそのまま用いることが出来る。大気圧から100Pa程度までの輸送に関しては感度を落とさず二次イオンを輸送するために特別な配慮が必要となる。具体的には、電界を用いず気体の流れを利用して二次イオンとその他中性粒子を区別なく引き出し、屈曲した四重極イオンガイド中に導入することによりイオンのみを取り出す方法が考えられる。試料室及びそれに続く排気チャンバの真空度、取得される二次イオンの質量電荷比(サイズ)、二次イオン収率の関連性を取得し、二次イオン輸送光学系の最適化を行う。
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