1. 重い電子系強磁性体CeRuPOの圧力効果を検証 CeRuPOは重い電子系において珍しい強磁性体であり、強磁性の量子臨界現象を調べるのに絶好の物質と考えられる。そこで、我々は電気抵抗、NMRを用いてCeRuPOにおける強磁性が圧力下でどう変化するかを調べた。実験の結果、CeRuPOにおける強磁性は1GPa以上で反強磁性へと一次転移的に変化し、その反強磁性は2.7GPa程度で消失することが分かった。また、反強磁性を示す圧力領域でも強磁性的な相関が強く残っていることも明らかにした。CeRuPOでは強磁性的な相関と反強磁性的な相関が拮抗しており、これらの相関によって多彩な基底状態が生み出されていると考えられる。 2. 天然鉱物AuTe_2において圧力誘起超伝導を発見 AuTe_2はカラベラス鉱と呼ばれる天然に存在する鉱物でひずみのある単斜晶の結晶構造をしている。過去の研究からAuTe_2は圧力をかけると結晶構造がひずみのとれた三方晶に変化することが報告されている。さらに最近、岡山大学の野原グループによってAuサイトにPtを部分置換することによって構造がひずみのある単斜晶から三方晶に変化し超伝導が発現することが報告された。そこで我々はAuTe_2が高圧下でも超伝導になることを期待して圧力を加えた状態で電気抵抗と交流磁化率の測定を行った。実験の結果、我々はAuTe_2が高圧下で三方晶になると超伝導になることを発見した。また、理論計算を行うことでAuTe_2の超伝導には結晶構造のひずみがとれることが大事である可能性を指摘した。今回の発見はAuTe_2のような天然に存在する単純な組成の物質でも外力を加えることで超伝導になることを示すことで、まだ世の中には我々の知らない超伝導体が数多く存在していることを知覚させる結果となっている。
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