本研究の目的は、高校生のメンタルヘルスリテラシーの向上を図り、相談意欲を高めることであった。前年度までの研究成果を踏まえ、今年度は内容をブラッシュアップし、引き続き介入研究を実施した。その結果、精神疾患に対するスティグマが低減し、専門的な援助に関するイメージもポジティブなものに改善した。その効果は介入直後だけでなく、介入3か月後まで維持されていた。相談意欲の向上にも効果がみられた。 一方、リテラシーの中でもスティグマなどの「イメージ」に関するものは改善していたが、「知識」に関するものは介入直後では改善がみられたが、3か月後までは効果が確認できなかった。知識の定着のために、介入方法の改善が必要である。また、専門的な援助に関するリテラシーや相談意欲は向上したが、友人など身近な非専門家への相談意欲に関しては、大きな変化がみられなかった。専門家への相談意欲が向上することはもちろん重要であるが、高校生の場合、友人や親など身近な非専門家の存在も重要であると考えられる。この点に関しても、介入方法のさらなる検討が必要である。 今年度は、メンタルヘルスリテラシーに関連した尺度の作成も行った。心理専門職への援助要請に関する態度尺度短縮版(ATSPPH-SF)と、心理専門職へ相談することに関するセルフスティグマ尺度(SSOSH)の日本語版の作成を行った。どちらの尺度も予備調査を行い、日本語訳について詳細に検討した後に本調査を実施した。その結果、信頼性および妥当性が確認された尺度が作成された。
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