研究課題/領域番号 |
13J02029
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
勝田 隼一郎 広島大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 超新星残骸 / ガンマ線 / フェルミ衛星 / 星形成領域 |
研究概要 |
本研究の目的は、断熱膨張期の超新星残骸(SNR)における加速粒子を観測的に調査することで、SNRが宇宙線加速源であるかの検証を進めることである。この目的のため、非常に大きなサイズを持つCygnus LoopをLATで観測し、ガス密度の異なる空間領域ごとにスペクトルの取得を米国SLAC研究所にて行った。解析の結果、>1 GeVと>3 GeVのカウントマップで異なる領域(北東/西)が明るいことを確認し、空間領域ごとに異なるスペクトルブレイクを持つ兆候を得られた。さらにCygnus Loopを空間的に4分割して、スペクトルを測定した結果、ブレイクの違いが統計的に有意に見られた。現在、この違いが系統誤差でないか、さらに詳細に調査しているところである。もしこの違いが系統誤差でないとすれば、このエネルギー帯域で、単一のSNRのエネルギーブレイクが顕著に確認されたのは初めてのこととなる。これは周囲のガス密度がSNRのスペクトルブレイク(加速できるエネルギー上限値の指標)に与える影響を理解する上で非常に大きな手がかりとなる。 ほとんどのSNRは、星形成領域において形成される。近年の研究から、この星形成領域はSNRが誕生する以前から星風で加速された粒子がトラップされている可能性を指摘されている。この仮説を検証するため、大質量の星形成領域候補であるG25領域を、LATを用いて観測し、米国SLAC研究所にて解析を行った。解析の結果、星形成領城とほぼ同程度のサイズを持っガンマ線の観測に成功した。現在、このガンマ線が本当に星形成領域からの放射であるのか、詳細な検討を行っているところである。もしそうであれば、星形成領城からのガンマ線放射の2天体目の例となる。先例との比較を行うことで、星形成領域での粒子加速のプロセスについて大きな示唆が得られると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Cygnus LooPの解析において、当初の予想より系統誤差の評価に時間がかかっているため。G25領城の解析に関しても、ガンマ線放射の起源の特定を行うために、当初想定していたよりも、多くのデータとの比較を行う必要が出てきたため、論文の投稿準備に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
当面は、解析を行っているCygnusLoopとG25領域の結果を、国際会議および投稿論文として発表することを目標とする。その後、中年のSNRの系統解析に移行する。研究方針は、当初の予定通り進めていく予定である。最も大きな問題である解析時間の長時間化への対策として、より多くの研究者と共同研究を積極的に行うことで、解析時間を短縮する。
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