研究課題/領域番号 |
13J02029
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
勝田 隼一郎 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フェルミ衛星 / 星形成領域 |
研究実績の概要 |
大質量の星形成領域(MSFR)における高エネルギー粒子の加速過程の調査を行ってきた。この研究では主にLATによるガンマ線観測とX線天文衛星XMM-Newton搭載のEPIC検出器によるX線観測を行った。MSFRもSNRと同様に広がりを持つ高エネルギー天体であり、SNR観測で培った解析技術を生かしMSFRのガンマ線解析を行った。私は5年分のLATデータを用い、ターゲット天体を最近報告されたMSFR候補の天体リスト約20天体にまで広げた。この結果、MFR候補天体のG25からガンマ線検出に成功し、そのスペクトルと空間形状の詳細な解析を行った。さらに私はX線観測によって、MSFR G25を形成していると思われるOBクラスターを初めて発見した。 私はこのG25領域付近の水素原子、水素分子、赤外線のデータを調査するこで、この領域にMSFRを構成すると考えられるバブルの存在を発見し、観測されたガンマ線がこのバブルの内部に存在していることを示した。これはMSFRからのガンマ線検出の唯一の事例であるCyg Xと同じ空間的特徴である。ガンマ線スペクトルの形状もCyg Xの特徴と合致しており、G25がMSFRからのガンマ線検出の2番目の事例であることを強く示唆している。さらにスペクトル形状が空間的にほぼ均一であることを明らかにし、ガンマ線がバブル内の磁場乱流で加速された粒子からの放射である強い示唆を得た。またMSFRのモデリングを行うことで、高エネルギー粒子の物理パラメータを評価しCyg Xとの比較を行った。これにより、ガンマ線光度がOBクラスターの放射エネルギーではなくバブルの体積に依存していることを発見した。私はこの研究を主導的にすすめ日本天文学会と国際会議で口頭発表を行い、投稿論文として準備している(LATチーム内で査読中; 投稿間近)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していたガンマ線解析以外の研究の仕事量が増加したため。例えば、2015年度打ち上げ予定のX線天文衛星Astro-H搭載のHXI検出器が宇宙空間で正常に動作をするかの評価を行うため熱真空振動試験に参加した。また日本国内の研究者や米国NASAと共同で、HXI・SGDの応答関数を含む解析ソフトウエアの開発を行っている。私はNASAの作成した解析コードが期待された通りの動作と結果を出力するかの検証を主に担当している。さらにサイエンスグループとして、系内で最も若いSNR G1.9+0.3の観測提案を主導しAstro-Hで達成するサイエンスの立案においても貢献している。また私は2014年にNuSTARによるSNR RX J1713.7-3946の観測提案(提案は受理)において共同提案者として参加し、観測で期待されるスペクトルのシュミレーションを担当した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度にはSPring-8において、SGDの主検出器であるコンプトンカメラの偏光能力の実証実験を行う。また引き続きソフトウェアの開発や、X線で行えるサイエンスについての考察についても引き続き行うなど、解析以外にも研究時間を使用する予定である。一方で、計画していた星形成領域の解析では、ガンマ線、X線、赤外線、電波データを用いた多波長解析であり、解析量と情報量が多量である。これは解析時間の増加と、LATチーム内の査読に時間の増加につながる。解析時間の短縮を目的として、でき得る限り、多波長データではなくガンマ線データの解析に集中して論文を準備するようにする。これにより計画していた星形成領域の解析を進める。
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