研究課題
本研究は、超好熱古細菌Aeropyrum caminiの全ゲノム解読とその遺伝子資源のライブラリー化を目的としている。今年度の成果は以下の通りである。(1)深海熱水孔より分離された海洋性超好熱古細菌A, caminiの全ゲノム解読Genome Sequencer FLX Titaniumパイロシーケンスプラットフォーム用いてシーケンスすることで総塩基数1,595,994bpのA. camini全ゲノム配列の決定に成功した。Microbial Genome Annotation Pipelineを利用したアノテーションにより、50個のrRNA遺伝子と1,695個のタンパク質コード領域を推定した。A. caminiのゲノム配列のGC含量は56.7%、ゲノム上の複製開始点は2個と推定された。これらのゲノムの性状は浅海熱水孔より分離された近縁種Aeropyrum pernixと類似していた。(2) A. caminiとA. pernixのゲノム比較A. eaminiとA. pernixは1,455個(86-88%)のオルソロガス遺伝子(共通祖先に由来する遺伝子)を共有しており、両者のゲノムシンテニー(遺伝子の並びと相同性)はよく保存されていた。その一方で、2つのA、pernix溶原化ウイルス(APSV1とAPOV1)とウイルスの感染履歴であるCRISPRにおいてシンテニーの崩壊が認められた。さらに、A. eaminiとA. pernixにおいてそれぞれ190個と245個のオルソロガスでない遺伝子を解析した結果、ウイルスと相互作用することで、ゲノムが多様化していることが示唆された。また、A. eamimに特異的な遺伝子のほとんどは機能未知であったものの、独自の重金属の輸送酵素遺伝子(ACAM_0984)をコードしていた。本酵素は高い耐熱性や耐久性が見込まれ、レアメタル回収技術などへの応用が期待される。
2: おおむね順調に進展している
超好熱古細菌A. caminiの全ゲノム配列の解読に成功し、そのゲノム解析を予定通り進めることができた。ほとんどが機能未知であるものの、近縁種であるA. pernixとゲノム比較することで本種に特有の遺伝子ライブラリーを構築でき、おおむね順調と評価される。
今後は、培養困難な好熱古細菌の有用遺伝子を探索するため、環境中のDNAを網羅的にシーケンスするメタゲノム解析を行う。A. caminiのゲノム情報も統合することで、有用遺伝子ライブラリーを構築する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件)
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