研究課題/領域番号 |
13J02058
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山中 悠資 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 津波 / 短周期波 / 防災計画 / 津波計算システム |
研究実績の概要 |
岩手県大船渡市綾里湾では,2011年の東北津波来襲時に,津波の短周期波によって堤防が破壊された可能性が高いことがわかった.東北津波による堤防破壊は,ほとんどが津波が堤防を越流したことによるものか,それに伴い堤防背後域の地盤が洗掘されたことによるものであると考えられている.津波の短周期波による堤防破壊はこれまで見られなかった新たな堤防破壊形態であり,この知見は海岸堤防の設計などに重要になると考えられる.したがって,それの沿岸域での挙動や影響などを詳細に分析する必要があるため,室内実験や数値計算を行って定量的なデータを蓄積した. 日本海津波を対象とした,計算負荷を低減させた津波伝播計算システムを構築した.同システムは極めて短時間で任意地点における津波波形を推定することができるため,来襲津波の特性を効率的に把握することができる.同システムに適用した手法を用いて,想定津波の不確実性を評価した.津波が発生する位置が想定よりわずかに異なるだけでも,沿岸域での津波による最大水位は大きく変化することが示された. 歴史津波を対象とした津波の氾濫計算を行い,沿岸域における津波氾濫の定量的なデータを蓄積した.津波堆積層と思われる地層が発見された地域を対象とした氾濫計算を行い,地層サンプルを採取した地点周辺の津波による流れ場の状況を分析した.その結果,その周辺では海岸の土砂が移動させられるような流れ場が生じていたことがわかり,その地層は津波によって形成された可能性があることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
津波防災を考えるうえで海岸堤防は不可欠の存在である.津波による沿岸被害を防ぐために,あるいは低減させるためには,津波による海岸堤防の破壊を防がなければならないことから,それが破壊に至るまでの過程を分析することが重要である.これまでの研究で,2011年の東北津波によって発生した短周期波が,岩手県大船渡市綾里湾の海岸堤防を破壊した可能性があることがわかった.また津波の短周期波に関する定量的なデータは不足しているため,室内実験や数値計算などを通してそれを順調に蓄積している. 日本海津波を対象とする,計算負荷を低減させた計算システムを構築した.これをインターネット上で実装する予定であり,それを活用することによって各地域に来襲する津波の特性を瞬時に把握することができる.日本海沿岸域では津波防災計画の策定及び実施が遅れている地域が多いが,これを利用することによりそれを効率的に実施することができると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
津波の短周期波に関する定量的なデータを引き続き蓄積・分析する.まずは前年度までの室内実験及びその分析を継続して行う.さらに2011年の東北津波では,申請者が対象とした地域以外にも津波の短周期波が発生していた可能性が残されている.そこで,他の地域を対象とした数値計算を実施し,その地域の特定を試みる.これにより特定された地域から,それに関する定量的なデータを蓄積する. 次にすでに構築した津波計算システムの,インターネット上での実装を完了させる.また現在はそれを適用できる海域が制限されているが,順次対象海域を拡大させる.
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