研究課題/領域番号 |
13J02070
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
金子 竜也 千葉大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 励起子絶縁体 / BCS-BECクロスオーバー / 厳密対角化法 / 自己エネルギー汎関数理論 / 変分クラスター近似 |
研究概要 |
本研究は、励起子絶縁体状態(励起子相)の理論を構築することを目的にしており、今年度は励起子凝縮状態のBCS-BECクロスオーバーと強相関模型に対する数値計算プログラムの作成に力を注いだ。詳細については以下に示す。 励起子凝縮状態ののBCS-BECクロスオーバー 本研究ではまず、二層電子系における励起子凝縮状態のBCS-BECクロスオーバーを議論した。厳密対角化法を用い、異常Green関数を計算することで弱結合から強結合へのクロスオーバーを議論し、電子と正孔の間に大きな質量差がある場合は電子と正孔は強く結合できないことを示した。次に、一次元拡張Falicov-Kimball模型における励起子絶縁体状態を密度行列繰り込み群(DMRG)を用いて研究した。DMRGを用いて一次元拡張Falicov-Kimball模型の精密な相図を作成し、一次元励起子相の臨界的性質と、BCS-BECクロスオーバーの議論を行った。また、電子-正孔系だけでなく、近年発展が進む冷却原子系のBCS-BECクロスオーバーにも着目し、変分クラスター近似を(VCA)を用いて、基礎模型である引力Hubbard模型における超伝導(超流動)状態のBCS-BECクロスオーバーの研究も行った。 数値計算プログラムの構築 VCAは熱浴サイトを考慮せず電子の遍歴性を近似的に扱っているため、電子相関に由来する金属絶縁体転移(Mott転移)などを議論するのに必ずしも有効ではない。そのため、Mott転移に対しても有効な計算手法として、熱浴サイトを考慮した計算コードの作成を行った。 励起子密度波状態の安定性 電子-格子相互作用を考慮した二軌道Hubbard模型における励起子密度波状態の安定性の評価も行った。フント結合がスピン密度波状態を電子-格子相互作用が電荷密度波状態を安定化させることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は励起子絶縁体状態の基礎理論の構築を目標とし、BCS-BCEクロスオーバーの物理を中心に石究を行った。数値計算技術の向上、励起子凝縮状態の理解も深まった上に研究成果も得られたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も励起子絶縁体や励起子密度波状態など、励起子相の基礎理論の構築を進めていく予定である。今年度は模型を用いた数値計算を中心に励起子相の議論を行ってきたが、今後はより現実の物質に即した解析的研究も行なう予定である。実験との提携も行い、より深い理解にも努める。来年度以降は励起子相と超伝導状態の関連性についても本格的に研究を始める予定である。 また、自己エネルギー汎関数理論を励起子凝縮状態以外の問題にも適用し、強相関模型の研究を行なう。具体的にはHubbard模型におけるMott転移やBCS-BECクロスオーバーの研究を行なう予定である。
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