研究概要 |
本研究では、リチウムイオン二次電池の高容量化を目的として、液相プラズマによるSnナノ粒子生成を研究した。Snナノ粒子は従来のグラファイト系電極より高容量を有する負極材料として有望であり、液中プラズマ法は単純な装置で短時間の粒子合成が可能である。しかしながら、液中プラズマによるSnナノ粒子合成はいまだ実現していない。そこで本年度はまずSpナノ粒子合成のための最適な実験条件を見出すため、界面活性剤としてのCTAB(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)の濃度および水温が生成物の組成および形態に与える影響を調査した。その結果、1gのSnナノ粒子の製造のために、1mgのCTABの添加が最適であり、水温が85℃以下で製品の酸化が抑制された。 さらに、対極をリチウムとした半電池を用いて、生成したSnナノ粒子のリチウムイオン電池負極特性を評価した結果、Snナノ粒子単独では充放電に伴う体積膨張の影響が大きいため、電池特性が充放電ごとに低下した。そこで、Snナノ粒子と黒鉛の混合体を合成し同様に評価した。バインダーとしてPVDFもしくはPVA、黒鉛の添加量を30, 50, 70%と変化させ最適な条件を検討した結果、バインダーとしてPVAを用い、黒鉛の割合を70%とした場合、20サイクル後の容量は414mAh/gを示した。この値は従来のグラファイトの理論容量を上回る値である。PVAの結合力がPVDFに比べて強いこと、多量の黒鉛の添加により体積膨張の影響が十分緩和されたため、特性が向上したと推察される。以上の結果より、液中プラズマによりSnナノ粒子合成が可能であり、得られた製品はリチウムイオン電池の特性向上に寄与することを明らかにした。
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