本研究は、砂漠化問題が深刻になっている西アフリカ・サヘル地域において、住民である農耕民ハウサの実践する野生樹木の利用と管理、土地荒廃と干ばつという環境変動から生計を維持するための対処方法を明らかにすることを目的としている。現在までの研究では、農耕民ハウサは耕作地内に自生する野生樹木を管理することによる砂漠化防止策を実施していることが明らかとなっている。調査村に住み込むことで、①砂漠化プロセスの解明、②野生樹木を利用した砂漠化防止策の検証、③野生樹木の利用に関する調査という3点についての調査をおこなう。同様の調査を同じサヘル地域に位置するガーナ北部についてもおこない、ハウサの実施する砂漠化対策としての野生樹木の利用を総合的に評価する。最終的には、サヘル地域における砂漠化の防止と食料確保による生活向上の両立を目指す救荒木システムの考案を目指す。 これまでの調査から、ニジェールにおいては、樹木は耕作地の生産性の向上に役立てられ、平常時の作物収量の増加を目指していることが明らかとなっている。これと同時に、干ばつや多雨などの降水量の変動によって作物の生長不良が生じた際にも、救荒食料や家畜の飼料としての利用がなされ、世帯や親族、村の生計維持にも役立てられる。 比較としておこなったガーナ北部のギニアサバンナ地域では、ハウサの実施する飛砂の捕捉を目的とした樹木利用は有効ではないことが明らかとなった。しかし、ガーナ北部の市場ではBalanites aegyptiacaの実が食料として売られ、ハウサ同様に救荒食料として葉が利用されていることが明らかとなった。本研究の最終的な目的である「土地の荒廃の防止と食料の確保を両立させる救荒木システム」の構築の一端として、スーダンサバンナ地域におけるB. aegyptiacaの販売による現金稼得の機会の創出が可能であると考えられる。
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