研究課題
本年度は,うつ病の再発をもたらす脆弱性に関連した神経基盤の理解をさらに深め,本研究課題を発展的に遂行することを目的として,うつ病のニューロイメージングや神経行動的介入方法について,先駆的な研究を行っているピッツバーグ大学精神医学講座において研究活動を行った。まず,研究実施環境の整備を行うため,所属プログラムのディレクターとの密なミーティングを通して,申請者の取得データとピッツバーグ大学にて取得されたデータの統合方法,および研究施設の具体的な運用方法の検討を行った。これによって,ピッツバーグ大学にて蓄積されたデータおよび研究技術の援用が可能となり、申請者の研究成果を存分に反映させた研究の遂行が可能となった。次に,心理療法によってうつ病が寛解した患者,および過去に虐待経験のある健常者の脳活動について,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた検討を行った。うつ病寛解患者に対しては,抑うつに関連する脳活動を惹起することが確認されている自己関連課題を実施し,課題実施中の脳活動に対して共クラスタリング法による解析を行った。その結果,うつ病寛解後の脳活動には,情動系と遂行機能系といった特徴的なクラスター構造に基づく患者群のサブタイプが認められた。また,虐待経験者においては,抑うつ気分喚起時における扁桃体活動を起点とした機能的結合性を検討した。その結果,前頭前野の外側部と内側部をはじめ,情動制御に関わる部位間の結合性が認められ,これらは虐待経験者の特異的な情動調節プロセスを反映している可能性が示された(海外学術雑誌に投稿中)。これらの研究成果は,脆弱性の背景にある神経基盤の理解の一助となることが期待される。そのため,脆弱性に焦点を当てた心理学的介入方法を検討する際において,臨床的示唆に富んだ研究成果であると考えられる。
3: やや遅れている
現在までに,今年度から研究を開始した機関における研究実施体制が確立され,本研究課題の目的であったうつ病の脆弱性の神経基盤に関する検討が行われてきた。一方で,一部の研究成果については論文投稿がなされているものの,研究成果報告についてはいまだ十分であるとはいえない。研究成果の一層の発信が望まれることを鑑みて,達成度の観点からはやや遅れていると考えられる。
本研究課題を完遂するため,これまで得られた研究知見に基づく心理学的介入方略について実験的検討を行う。また,本研究課題で得られた研究成果を迅速に発表していくことを予定している。
「Program in Cognitive Affective Neuroscience」においては、ページ内における「Postdoctoral Fellows」の紹介箇所に、研究者に関する情報が記載されている。
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CNS & Neurological Disorders - Drug Targets
巻: 13 ページ: 1026-40
10.2174/1871527313666140612102321
http://researchmap.jp/tetsuya_yamamoto/
http://www.wpic.pitt.edu/research/pican/people/default.html