研究概要 |
排卵前卵胞への発育を担うeCG刺激による新たな反応系の解明を目的に, 排卵前卵胞のLH受容体の形成に着眼し, マウスをモデルとした実験手法を用いて解析を進めてきた そして, これまでにeCG刺激により分化誘導因子レチノイン酸(RA)の合成機構が起動することが, LH受容体形成に重要であるということを明らかとした研究結果を踏まえて, 本年度は以下の解析を行い, 主に3つの成果を得た. まず, ①LH受容体の遺伝子発現機構におけるRAの作用解析. LH受容体の上流配列はGC配列に富んだ特徴がある. CpG配列に注視したバイサルファイトシークエンス解析から, eCG刺激によりCpG配列のメチル化レベルは有意に低下すること, さらにeCGと薬剤の投与によりRA合成系を阻害させた穎粒膜細胞では, これと比較してメチル化割合が高いことを明らかとできたこと。次に, ②卵胞発育過程におけるLH受容体以外のRA標的遺伝子解析. DNAマイクロアレイ解析の結果から, 薬剤投与によりRA合成系を阻害させた穎粒膜細胞で著しく発現が低下した遺伝子(305/492)のうち, RAの応答配列をもつものは83個あり, またeCG刺激により遺伝子発現を間接的に制御するヒストンメチル化酵素やDNAメチル化などゲノム修飾に関わる遺伝子の発現が有意に低下することを見出したこと. 最後に, ③この活性型RAの局在や発現変動を捉える, RA応答配列にLacZカセットを繋いだ発現ベクターを導入した遺伝子組み換えマウスの解析. 一次卵胞に強いシグナルが認められ, 二次卵胞と胞状卵胞の内爽膜細胞, 卵巣の間質にβ-galactosidaseの局在がみられたことである. これらの成果は, 卵胞の発育過程のように時間をかけて大きく変わっていく卵胞内環境の移行を可能とするであろう体細胞での遺伝子発現変動を, DNAのメチル化を含むゲノム修飾の視点から証明することにつながると期待している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, DNAメチル化に関わるDnmt1について着眼し, 排卵前卵胞におけるLH受容体形成に限らず, 卵胞の発育・排卵過程と視野を広く持って, 卵胞発育, 排卵過程を追って卵胞内細胞の分化段階を捉える方向に展開していく予定にしている.
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