研究課題
運動開始時に高位中枢からの信号(セントラルコマンド)が両側下肢の骨格筋にて交感神経性血管拡張を引き起こすことを発見した。歩行のような日常動作は両脚で行なわれるため、セントラルコマンドは運動開始時に見込み的に両脚骨格筋へ酸素を供給すると考えられる。しかし、片側性に行われることが多い上肢運動時にセントラルコマンドは対側上肢の非活動筋にて血管拡張を引き起こすか不明である。またセントラルコマンドの発生に中脳腹側被蓋野(VTA)が関与することが報告されているが、運動中のVTAの活動動態は不明である。以上の2点を解明することを目的としてヒトおよびラットを用いて実験を実施した。ヒトを用いた実験:近赤外線分光法を用いて、片側上肢運動時(1分間、最大運動強度の40%)および運動イメージ時の対側上肢筋群(三角筋・上腕二頭筋・上腕三頭筋・前腕伸筋群)における局所組織血流量を評価した。血流応答が交感神経性に生じるか確かめるために、ムスカリン受容体阻害薬およびβアドレナリン受容体阻害薬を投与した。その結果、セントラルコマンドが片側上肢運動開始時および運動イメージ中に対側上肢非活動筋群の血流量を増加させることを解明した。さらに、非活動筋群の血流量増加はコリン作動性交感神経およびアドレナリンを介することを解明した。ラットを用いた実験:セントラルコマンドは運動および運動意図時に努力依存性に生じるため、自発運動に伴いVTAの神経活動が強度依存性に増加することが考えられる。そこで、「安静・トレッドミル運動(低, 高強度)・自発運動」の4つの条件下でのVTAおよび周辺関連脳領域の神経活動度を比較した。神経活動度の指標として、神経興奮に伴い生じる核タンパク質のc-Fos発現量を測定した。予備的結果から、安静時のVTA活動度は極僅かであったが、運動に伴いVTA活動度は強度依存性に増加することが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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