研究課題/領域番号 |
13J02241
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
植木 潤 九州大学, 大学院数理学研究院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 数論 / 結び目理論 / イデール類体論 / 岩澤理論 / アレクサンダー理論 / 肥田理論 / 普遍変形 / セルマー群 |
研究概要 |
「幾何的イデール理論の研究」は数論的位相幾何学の主道の研究を推し進めるものであった。 まず「イデール類体論」の構成については、25年度に一つのナイーヴな幾何的類体論が新甫氏によって構成された。そこで自分は、Sikora氏のアフィン構造を忘れること、結び目集合の修正、「存在定理」に関する示唆、有理ホモロジー球面版への拡張と応用に向けて記法と証明の整理などを与え、研究は現在も鋭意進展中である。 一方で3年目の選択肢にあった、「肥田理論の類似」に関する進展があった。岩澤理論とアレクサンダー理論をGL(1)表現の理論と思ったときに、2次元表現に対応するものを考えるという方向での第一歩である。SL(2)表現の「普遍変形」の存在が森下氏・寺嶋氏らによって抽象的に示されていたが、特に二橋結び目群のRiley標準表現に対して普遍変形の具体構成に成功した。これは森下・高倉・寺嶋・植木の共著論文に纏められた。 アレクサンダー理論と岩澤理論の類似は歴史的にも大きな役割を果たしたことが良く知られている。その類似の非可換版は、次の時代の数学への示唆を与えるものに違いない。実際例えば、セルマー群の捩じれは数論において大定理であったが、そこからたとえば捩じれアレクサンダー多項式たちを補間するような普遍的対象が得られると期待されている。 こうした成果の背景には弛まぬ研鑽および出張による専門家との交流があり、類体論・表現輪・双曲幾何など勉強を進め、また多くの集会に積極的に足を運び知見と交流を広めることで、色々な機会も得られた。岩澤理論の類似については早稲田や広島で、結び目群の普遍変形表現については大阪市立大で講演をし、さらなる示唆や進展を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
積極的に多くの集会に赴き、知見を深め交流を広げた。類体論に加え、表現論や双曲幾何の勉強も行い、それが研究の進展に寄与した。一年目には「イデール類体論の幾何的類似を作り、その射程を調べる」と計画書には書いた。存在定理に関する示唆を与えるなど着実に進展しているが、まだ応用に向けて改良の議論をしている最中であり、これから射程を鯛べる段階である。一方で、大変良いチャンスに恵まれ、27年度の課題を一つ先取りできた。岩澤理論のある種の非可換化である肥田理論の類似として、アレクサンダー理論の非可換化について進展を得て、二橋結び目群のSL2普遍変形表現の具体構成に成功した。以上を鑑みるに、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き幾何的イデール類体論の応用、結び目の岩澤理論、また結び目の肥田理論については特に普遍変形からSL2塔を得たりセルマー群の類似物の捩じれを調べたりという目玉の研究が待っている。色々な協力者との共同研究体制も出来上がってきた。二年目は論文を幾つか書きたい。 ドイツのオーベルヴォルファッハでの集会や、スペインでのピリオドとモチーフのスクール、小豆島での非可換岩澤理論のサマースクールにも参加する。
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