研究課題/領域番号 |
13J02260
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
溜 和敏 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | インド : アメリカ / 原子力協力 / 二国間関係 / パワー |
研究概要 |
本研究は、冷戦終結後にインドとアメリカが政治外交関係において協力関係を強化したプロセスを分析するものである。外交交渉過程や国内の政治過程、グローバルな状況を分析することを通じて、両国の関係が変容した渦程を理解することを試みている。本年度は、印米原子力協力協定の交渉過程(2008年締結)に関する調査と、二国間関係におけるパワーがもたらす影響に関するモデル化に向けた研究を主に進めた。 第1に、申請者の博士論文(2012年度)のテーマであった印米原子力協力協定をめぐる二国間関係について、追加的な調査を実施した。論文の仕上げ段階において調査の必要性を認識した資料への追加調査や、外交実務の当事者、関連するテーマを研究する研究者への聞き取りを実施した。調査の結果、博士論文の執筆段階では認識できていなかった交渉初期におけるインド政府側の狙いについて、新たな発見が得られた。関係者への聞き取りを通じて、インド政府が当初はターラープール原子力発電所への濃縮ウランの供給という限定的な目的を考えていたことが確認された。 第2に、事例の研究からディシプリンへのフィードバックを目指して、二国間関係をめぐるモデルの構築を試みている。印米原子力協力協定を事例とした博士論文では、インドとアメリカのパワーの非対称性が両国関係に矛盾する影響を及ぼした可能性を指摘した。すなわち、インドはアメリカと比較してパワーにおいて劣るが、それゆえにインドでは相手国への関心が国内において相対的に高くなり、相手国への妥協が困難な環境が醸成され、交渉において有利に働くというメカニズムである。この議論は、国内政治と外交交渉に関する2レベル・ゲーム論を用い、パワーの観点を導入して発展させたものである。博士論文における上記の議論は1つの事例からの着想に過ぎなかった。そのため本年度は、先行研究や他の事例を検討し、モデルの精緻化に向けて検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象国であるインドへの海外調査の実施など、研究において十分な進展が得られた。本年度は当該研究の成果について学会等における公表を行うことができなかったが、これは3年間の研究期間の1年目にあたる本年度に成果公表よりも調査の実施を重視したためである。総じて、計画通りの進展をしているものと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
調査・研究の実施にあたって計画の変更は予定していない。2年度目となる平成26年度は、インドおよびアメリカへの海外出張を含む調査を継続するとともに、研究成果の公表にも努める, 平成26年度中に国内学会での発表、ならびに学会誌への投稿を予定している。
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