研究課題/領域番号 |
13J02261
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中西 祐貴 京都大学, iPS細胞研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 消化管幹細胞 / 抗体療法 / 癌幹細胞 / Dcamkll |
研究概要 |
人体を脅かす癌組織には少数の「腫瘍幹細胞」が存在し、癌の形成や発展にとどまらず、癌の治療抵抗性や転移にも関与していると考えられている。すなわち、現行の抗癌剤治療では一時的に癌が縮小しても、「腫瘍幹細胞」を除去しきれないために、癌の再発をきたすとされ、腫瘍幹細胞を標的とする治療法開発の必要性が高まっている。また、腫瘍幹細胞を特異的に標的とすることは、正常組織に副作用がない理想的な癌治療につながる可能性がある。これまでに申請者らは、マウス腸腫瘍モデルにおいてDclk1が腫瘍幹細胞の特異的マーカーであること、そしてDclk1を発現する腫瘍幹細胞を除去することで、正常組織に影響を及ぼすことなく腸腫瘍が退縮することを示してきた。本研究課題は、マウスモデルで認めた抗腫瘍効果をヒト癌にも適用するために、Dclk1を標的とした抗体医療および癌免疫療法の可能性を検討することである。 Dclk1は大部分が細胞質内に存在するが、C末端部を細胞外に露出させていることに着目した。正常腸管において、Dclk1は大部分が細胞質内微小管領域に存在するとされるが、細胞外にC末端部位を露出させており、ソーティングが可能と報告されている(May R, Stem Cells, 2009)。そこでまず本年度は、C末端部に対するマウスモノクローナル抗体の作製に取り掛かった。マウスDclk1のC末端アミノ酸配列をコードするcDNAよりリコンビナントタンパクを合成した。そして、同リコンビナントタンパクにより免疫したマウスの膝窩リンパ節細胞を採取し、P3U1骨髄腫細胞と融合させることによりハイブリドーマを形成に成功した。得られたハイブリドーマをHAT培地で培養、選別し、クローン化を行った。親和性の高いクローンをELISA、ウエスタン・プロッティング法で選択し、ハイブリドーマ・クローンを樹立、モノクローナル抗体の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においてもっとも時間がかかると予想されていたリコンビナントDclk1に対する抗体を本年度中に作成することに成功した。しかし、いまだ抗体の感度・特異度に関しては十分に検討できておらず、来年度以降の研究にて実施していく方針である。
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今後の研究の推進方策 |
得られた抗体の抗原親和性を確認し、十分な親和性を確認できた場合、得られた抗体を用いて抗体依存性細胞性細胞障害活性(ADCC)や補体依存性細胞障害反応(CDC)を利用した抗体医療に発展させる。ADCCやCDCは現在臨床応用されている複数の標的治療薬においても主たる抗腫瘍メカニズムとされており、抗体医薬の薬効発現に重要な役割を担っている。ADCC活性をさらに上昇させるために、Fc領域に結合するN-グリコシド結合複合型糖鎖からフコースを除去したポテリジェント抗体とすることも予定している。
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