1.キリスト教において重要な表象である「聖霊」の概念の成立と発展の過程について、初期ユダヤ教文献の用例を分析し、初期ユダヤ教の分派において重要な表象であった「聖なる霊」の概念を、最初期のキリスト教もまた自らの文脈で用いたことを、「異邦人宣教」との関連から提示し、その研究成果を『基督教研究』第76号第2号に発表した。
2.「霊」および「天使」の概念に焦点を当て、初期ユダヤ教およびキリスト教におけるその変遷の過程を分析した結果、パウロによる解釈とルカによる解釈とがそれぞれにユニークなものでありながら、双方とも「異邦人も神の言葉を受ける対象に含まれる」との解釈に至っていることが明らかになり、この点が、原始キリスト教団がユダヤ教の解釈を継承しつつも独自の宗教へと分岐するに至った「転換点」であったことを提示した。この研究成果を、博士論文「初期ユダヤ教と原始キリスト教団における解釈と受容―『霊』と『天使』の概念の変遷を辿る―」としてまとめ、2015年3月に同志社大学より博士(神学)の学位を取得した。
3.平成26年度日本学術振興会「日本―スイス若手研究者交流事業」の派遣研究者として、2014年10月~2015年3月の期間、Zurich大学神学部にて「初期ユダヤ教における天使論および新約聖書におけるその受容」の研究を行なった。著者ルカの意図について様々な議論のあるテキスト(ルカによる福音書20章27-40節)について、当時のユダヤ教の解釈や終末論との関連から、ルカによるテキスト編集の研究に取り組んだ。研究の成果を英語論文“Living to God: A Study on Luke 20:27-40”としてまとめた。
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