研究課題
本年度は、昨年度に論文として公表されたザクロ石-石英ラマン圧力計が、様々な地域の地質帯に汎用的に適用可能かを検討するべく、Himalaya Stak地域の高圧エクロジャイトについて分析した。ラマン分光分析の結果に加えて、ジルコン年代とザクロ石のEPMA分析データを統合した結果、Stak地域の高圧エクロジャイトは、ヒマラヤ地域の超高圧エクロジャイトとは異なる変成温度圧力履歴を経験した事が明らかになった。この成果は、インドーアジアプレートの衝突に伴う、大陸衝突帯形成及び上昇メカニズムの解明に大きな寄与を与えることが期待される。上記の結果は、国際学会でポスター発表により報告した。ザクロ石-石英ラマン圧力計の研究手法を応用して、別のホスト-包有物の組合せで新たなラマン地質温度圧力計が構築可能かの検討を進めた。西アルプスPiemote Unit及びバリスカン造山帯Vosges地方で採取された岩石中に含まれるジルコンについてラマン分光分析した結果、同一粒子中でもラマンピークが一定の値ではなく、コアからリムにかけて変動する事が示された。これは、メタミクト化や微量元素の影響であると考えられ、ジルコンはホスト及び包有物として残留圧力を見積もるのには向いていない事が明らかになった。東南極Rundvågshetta地域の片麻岩中に含まれるザクロ石中の珪線石包有鉱物は、数値計算と整合的な結果が得られた。四国別子地域三波川帯の石英エクロジャイト中に含まれるザクロ石中の藍晶石は、測定では正の残留圧力を示したが、数値計算では負の残留圧力となり、一致しない結果となった。これは、数値計算で用いた藍晶石の状態方程式に問題があると考えられるが、今後精査する事で解決できることが期待される。アルミノケイ酸塩鉱物は、従来のザクロ石一石英ラマン圧力計では石英相転移のために適用する事が困難であった、高温変成岩及び超高圧変成岩にも応用が可能であり、ラマン地質温度圧力計がより多くの岩石に適用できる可能性を広げた。
最終年度のため記載しない。
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