研究課題/領域番号 |
13J02312
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉田 倫子 東北大学, 大学院歯学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 内軟骨性骨化 / 転写因子 / FoxC1 / PTHrP / Axenfeld-Rieger症候群 |
研究概要 |
胎生12.5目齢マウスのホールマウントin situハイブリダイゼーション法ならびに胎生14.5日齢マウス摩骨のin situハイブリダイゼーション法によりFoxC1の発現を検討した結果、Col2a1の発現に一致して、軟骨組織にFoxC1の強い発現を認めた。次に、マウス肢芽細胞にアデノウイルスシステムを用いてFoxClを過剰発現させると、アルシアンブルー染色陽性軟骨細胞への分化ならびにBMP2依存性Col2a1の発現が促進された。マウス初代培養軟骨細胞にFoxC1を過剰発現させ、軟骨細胞分化マーカー遺伝子の発現を網羅的に解析した結果、FoxC1によるPTHrPの著明な発現増加を認めた。Ch1PアッセイならびにDNAプルダウンアッセイにより、FoxC1はPTHrP遺伝子のプロモーター領域に存在するFoxC1結合配列(CTAAATAAC)に結合することが明らかとなった。さらに、FoxC1結合配列を6回タンデムに結合させたレポーターコンストラクトを作製したところ、FoxC1は容量依存的に転写活性を促進した。興味深いことに、FoxC1はIhhシグナル伝達分子Gli2と協調的に作用することによりPTHrPの発現を増加させる一方で、dominant negative Gli2の過剰発現はFoxC1によるPTHrPの発現誘導を抑制した。さらに、FoxClとG1i2の物理的結合が免疫沈降法により示された。 ヒトFOXC1は、顎顔面骨格形成異常を示すAxenfeld-Rieger症候群の責任遺伝子である。そこで、本疾患を引き起こすFOXC1遺伝子変異の一つであるF112S変異体(Forkheadドメイン内に存在する112番目のフェニルアラニン残基がセリン残基に置換)の作用メカニズムについて検討した。その結果、F112S変異は、DNA結合能を保持するがG1i2と結合できないため、PTHrPを適切に発現誘導できず、内軟骨性骨化に影響を及ぼしている可能性が示唆された。 以上の結果より、転写因子FoxC1は、G1i2と協調的に作用してPTHrPの発現を促進することにより、顎顔面骨格を含む内軟骨性骨化を制御している可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroにおけるFoxC1の機能的解析は計画通り進行した。ただし、in VivoにおけるFoxC1の機能的解析に関しては、現在FoxC1遺伝子自然発症変異マウス(ch/chマウス)を入手し解析中であるため来年度の報告となる。
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今後の研究の推進方策 |
FoxC1遺伝子自然発症変異マウス(ch/chマウス)の内軟骨性骨化および顎顔面骨格形成を二重染色骨格標本、HE染色病理組織切片により検討する。また、In Situハイブリダイゼーション法により軟骨細胞分化マーカー遺伝子(II型コラーゲン、X型コラーゲン、PTHrP、Ihhなど)の発現を形態学的に検討する。さらに、ch/chマウスより初代培養軟骨細胞を採取し、その細胞特性を解析することにより、FoxC1の機能的役割を多角的に解析する。 最終的にはこれら知見を統合的に解釈することにより、内軟骨性骨化におけるFoxC1の機能的役割を明らかにする予定である。
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