研究実績の概要 |
昨年度、層状オクトシリケート層間に規則的にピペリジノ基を固定化し、Si-OH基あるいはSi-OCH3とピペリジノ基のN部の距離が1つの固体中で一定な物質を合成し、触媒活性調査を行った。本年度は、昨年度確立した触媒合成法を基に、①層状物質を触媒として用いる際に問題となる層間へのアクセス性の低さを克服するための層間膨潤剤の利用および、②触媒の合成の一部を変化させることで一連の触媒を合成し、活性点近傍の環境の違いのニトロアルドール反応の変換率への影響調査の二つの研究を主として行った。 ①昨年度合成した層表面に規則的に配列した触媒をニトロアルドール反応へ適用する際に、層間膨潤剤としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を導入した。その結果、DMFを導入しなかった場合に比して転換率が著しく大きくなったことが示された。層状オクトシリケート誘導体触媒をDMF処理しXRD測定を行うと、10 nm以上層間が拡大されたことを示す回折が観測されており、従来の層状ケイ酸塩に対する膨潤に比して非常に大きなものとなっていた。したがって、層間が膨潤されたことにより基質のアクセス性が上昇したことで、触媒活性が上昇したと考えられる。 ②上記DMFで触媒層間を膨潤させながらの触媒反応は、10 nm以上の層間で基質が拡散するため、基質の大きさよりもはるかに大きな層間間隔を持って反応するため、一つの基質が層表面の活性点に対して相互作用する際に、隣の層の活性点が相互作用することが無視できる。そのため、酸点(Si-OH基)と塩基点(ピペリジノ基のN部)の距離の違いの協奏作用を調査しやすいと考え、DMF導入下で、酸点と塩基点の距離が異なる触媒を合成し、ニトロアルドール反応の転換率を調査した。活性が最も高い最適な酸-塩基点間の距離があることが示され、酸点と塩基点間の距離が触媒反応に大きく影響することが分かった。
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