研究課題/領域番号 |
13J02323
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
阪中 幹祥 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2013-04-26 – 2015-03-31
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キーワード | 転移因子 / ランダム変異導入系 / Bifidobacterium longum / プロモーター / 転移酵素 / 次世代シークエンサー / ゲノム配列 |
研究実績の概要 |
本研究では,転移因子を利用したビフィズス菌のランダム変異導入系を確立することを目指した.この達成のために,1. 大腸菌での活性が低く,Bifidobacterium longumで高い活性を示すビフィズス菌プロモーターの同定と2. ランダム変異導入ベクターの構築を行った.また,確立予定のランダム変異導入系を最大限に活用することを目的として,3. B. longumの完全ゲノム配列を決定した. 1. 大腸菌での活性が低く,B. longumで高い活性を示すビフィズス菌プロモーターの同定:効率の良いランダム変異導入系を確立するには,転移因子の転移酵素遺伝子をビフィズス菌内で高発現させたランダム変異導入ベクターが必要である.一方,大腸菌内では,ランダム変異導入ベクターを安定的に保持するために,転移酵素遺伝子を発現させないようにするのが望ましい.これらの条件を満たすような転移酵素遺伝子の発現制御を達成するために,新規プロモーター評価系を構築して,大腸菌で活性が低く,B. longumで高い活性を示すビフィズス菌プロモーター(計3種類)を同定した. 2. ランダム変異導入ベクターの構築:1.で同定したプロモーターを用いて,転移酵素遺伝子を発現制御したランダム変異導入ベクターは,大腸菌内で安定的に保持された.その後,このベクターを用いて,B. longumゲノムへのランダム変異導入を試みたが,変異株の取得には成功しなかった.今後,ビフィズス菌変異株を効率良く取得するために,変異導入系のさらなる改変が必要であると考えられる. 3. B. longumの完全ゲノム配列の決定:次世代シークエンサーPacBio RS IIを用いて,B. longumのゲノム配列情報を取得した.今回取得したゲノム配列情報を,以前より取得していたドラフトゲノム配列情報と統合した結果,B. longumの完全ゲノム配列を決定することに成功した.B. longumのゲノムサイズは約2.3 Mbpであり,遺伝子数は約1950個であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌で活性が低いビフィズス菌プロモーターを同定・応用することにより,ランダム変異導入ベクターが大腸菌内で安定的に保持されないという問題を解決することができた.これにより,ビフィズス菌のランダム変異導入系の確立に大きく前進したと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後,ビフィズス菌内での転移酵素遺伝子の高発現化や変異導入実験の条件の最適化を達成することにより,ビフィズス菌変異株集団を効率良く作出することを目指す.ランダム変異株集団を作出次第,消化管内での生存に関わるビフィズス菌遺伝子を特定していく予定である.
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