研究課題/領域番号 |
13J02328
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
今村 貴子 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 和周波発生分光法(Sum Frequency Generation) / 分子動力学シミュレーション(Molecular Dynamics simulation) / 電角質水溶液(aqueous electrolyte solutions) / 表面化学(Surface Chemistry) / 電気二重層(Electric Double layer) |
研究概要 |
1. NaOH水溶液表面の分子構造解明 和周波発生分光法を介した実験と理論の直接比較により、NaOH水溶液の表面分子構造を明らかにした。分子動力学シミュレーションを用いた研究から、2つの重要な分子構造を見出した。1つ目はイオンが作る表面での層構造(電気二重層)で、2つ目はイオンを直接覆う位置(第一溶媒和圏)にある水である。NaOH水溶液と純水で和周波発生スペクトルを比較すると、前者の構造が中程度の強さの水素結合をした水に由来する部分に変化を与え、後者の構造がより強く水素結合をした水に由来する部分を変化させていることが分かった。このようなスペクトルの詳細な解析は、実験そのものだけでは難しく、コンピュータシミュレーションを使って現実系を適切に模した分子構造を再現したために可能となった。OHイオンが表面に少ないことを示したのも、重要な結果である。この結果は学術雑誌Journal of Physical Chemistry Cに投稿中で、そのほか学会でも発表した。NaOHは塩基性水溶液の代表例で、これまでに研究グループで行われてきた塩や酸の水溶液の例とともに、一般的な電解質水溶液表面の構造解明が一通り行われたことになった。当研究の成果も含め、Chemical Reviewに総説として発表、印刷中となっている。 2. 韓国ソウル大学校での氷表面反応の研究 韓国ソウル大学校・Heon Kang教授の研究室に7月から9月までの三か月滞在し、真空チャンバーを使用した氷表面の実験を経験した。二酸化硫黄SO_2の氷表面での加水分解を検出する実験を行った。水分子数層からなる薄い膜での反応と、100分子層程度の厚い膜での反応の比較検討を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NaOH水溶液表面の理論的研究は予定していた通り、結果をまとめ、学会誌に投稿することができた。また、海外の研究機関での研究活動に従事し、実験の手法を経験するとともに、視野を広げることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
DC2採用一年目で博士号を取得し、予定していた研究に区切りがついたこともあるので、採用二年目で受入研究員を変更する。新しい受入研究員のもとでは、研究課題の主要な分野である界面・表面科学の実験を行う予定で、一年目に理論計算していた和周波分光法の実験を行う予定となっている。当初計画していたマクロとミクロをつなぐようなマルチスケールの問題に関しても接点を見出せるような研究対象を検討する。理論的なアプローチによっても研究をサポートする可能性が大いにある。
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