研究課題/領域番号 |
13J02339
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
菅谷 麻衣 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 憲法 / 表現の自由 / アメリカ / ポルノグラフィー / 言論/行為二分論 / アメリカ憲法 |
研究概要 |
本研究は、アメリカ判例法理に古くから存在する「言論/行為二分論(speech/conduct distinction)」の系譜を追うことによって、ある種の言論を行為であると主張することが憲法解釈学にどのような影響をもたらすのかを考究するものである。 研究の第一年度目である本年度は、1980年代にアメリカで反ポルノグラフィー公民権条例の合憲性が争われたAmerican Booksellers Ass's v. Hudnut事件判決(598 F. Supp. 1316 (S. D. Ind. 1984) ; 771 F, 2d323 (7th Cir. 1985) ; 475 U. S. 1001 (1986))を分析し、この条例が言論/行為二分論を前提にして理論構築されていることを明らかにした。 同時に、Hudnut事件第1審判決で条例支持側と裁判所で解釈が分かれたChaplinsky v. New Hampshire事件判決(315 U. S. 538 (1942))にゼカライア・チェイフィー(Zechariah Chafee, Jr.)の著作が引用されており、チェイフィーを通じて同判決に言論/行為二分論が継受された可能性があることを明らかにした。 そこで、その真偽を明らかにするべく、チェイフィーに関する資料の収集に着手した。入手した資料によって、チェイフィーが現代的表現の自由法理の形成に寄与したとされる判事たちと書簡を交わしていることが判明し、さらに、その書簡の保管場所も特定することができたため、所属大学を通じて書簡の保管先にその送付を依頼した。現在、一部の書簡を入手し、残りの書簡の送付を待っている状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は、当初次年度に行う予定であった判例分析に費やされた。とりわけ、Hudnut事件判決の検討は事前の予想以上に実り多いものであり、この点において本研究は当初の計画以上に進展したと言うことができる。しかしその反面、本年度中にその資料調査の結果を公表することはできなかった。上記の二点を綜合し、本年度の研究は、おおむね順調な進展を見せたと言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、まずは本年度の資料調査の結果を公表する予定である。さらに、次年度以降も日本国内外での資料調査を行い、その結果を順次公表する予定である。とりわけ、次年度は当初の研究計画に従い、1919年頃のアメリカの判例法理の分析に専心する予定である。この作業を通じて、現代的表現の自由が形成されたとされる1919年頃にアメリカ判例法理に起こった動態を描き出し、その中で、言論/行為二会論がどのような役割を演じたのかを調査・分析する予定である。
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