研究概要 |
本研究では, 近年活発化している制限3体問題を用いた軌道設計の中でも, 特に力学的な平衡点(ラグランジュ点)近傍軌道の設計について, 実際のミッションにおいても有用と考えられる手法を構築することを目的としている. 従って, 本研究では以下のように研究の段階を定義する. 1)楕円制限3体問題を用いたラグランジュ点近傍基準軌道の設計. 2)楕円制限3体問題における基準軌道の効率的な軌道維持制御手法の確立. 3)基準軌道設計および制御手法の実モデルへの適用. 段階1)の成果をまとめ国際シンポジウムである"The 29th International Symposium on Space Technology and Science"およびにて報告した. 楕円制限3体問題は制限3体問題の中でもより現実的なモデルであり, 当モデルにおいて設計された設計解は実モデルにおいて軌道を設計する際に非常に良い初期解を与えることが可能である. 段階2)の成果についても同様に結果をまとめ, "The 23rd Workshop on JAXA Astrodynamics and Flight Mechanics" にて報告した, 楕円制限3体問題における基準軌道は簡易モデルである円制限3体問題のように1周回で閉じた軌道の設計が困難である. 必然的に複数回周回する軌道が設計され, 周回ごとにわずかに異なる特性を示すことが明らかとなった. このようなわずかに異なる特性を吸収するために, 本研究では複数周回の後系が閉じるまでを一つの力学系と考え, 結果として軌道を効果的に安定化させることに成功した. 段階3)では, 実際の天体歴を用いた太陽地球系L2点近傍軌道の制御を大きな摂動要因となる月重力を含有した実モデルにおいて調査し, 制御理論の有効性を示した. 以上の成果を持って, 博士論文を執筆し平成26年3月に博士の学位を取得した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己評価では「おおむね順調に進展している」とした. 理由として, 目的とした結果が想定していたより早く得られたことをあげる. 加えて, 博士の学位を取得したことからも, 結果の正当性が外部からも評価されたことも理由の一つである. 区分が①ではない理由は, 有用かつ正当な結果が得られたが有用な軌道に対してではなく, 設計された軌道がそのままミッション軌道としては不十分であることをあげる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究に残された課題は, ミッション軌道としても有用な軌道の設計および維持手法を実現すること. また, 太陽地球系以外によく用いられる地球月系制限3体問題についても結果を整理することである. 前者は, 同様のモデルにおいて方針が立っており, 技術的な課題はいかに高負荷の計算を安定して解くかに依存している. 後者についても, 基本的な考え方は前者と同様であり異なる点は, 主要2天体の質量比が近いことによる軌道の不安定性・大きな公転離心率である. 離心率についてはすでに関係性を解明しており, 不安定性を克服する手法も現在までの成果で達成している. 従って, 前者後者ともに目的達成までの道のりが見えており, 今年度後半を論文執筆に当てられる見込みである.
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