申請者が平成26年度に実施した研究の成果は、以下の通りである。 当該年度は研究計画における第2年度にあたり、申請者は主に博士論文の執筆に取り組んだ。具体的には、①博士論文の構成の吟味、②日本法の検討、③比較対象であるドイツ法の文献渉猟である。 申請者は第1年度に引き続いて博士論文の構成を吟味した。その結果、公的医療保険制度における医療供給者の統御構造を明らかにするためには、そもそも医療保険に関する法の中に、いかなる法原則がビルトインされているかを検討しなければならないことが判明した。そこで詳しく検討を行うと、公的医療保険における療養給付請求権、および、現物給付原則の規範構造と意義について、解釈上、空白と混乱が生じていることが明らかになった。そのような理解を元に、まず、日本法における行政解釈、判例、学説の内容を整理・検討した。その結果、療養給付請求権の規範構造を明らかにするためには、現物給付原則の検討を補助線とする、という手法が有効であることが明らかになった。次に、ドイツ法の文献渉猟を進めた。それにより、法定疾病保険制度が誕生して以来いかなる変容が生じてきたか、ということの全体像を明らかにすることができた。 申請者が以上のように取り組んだ作業は、博士論文を完成させるに当たっては避けられないものである。また、前述のように、公的医療保険における医療提供者の統御構造を検討する予備作業としても、十分な意義を有する。したがって、上記の作業は、申請者の研究計画に当たってはきわめて高い重要性を有するといえよう。
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