研究課題
本研究の第一目標は、惑星探査で得られる地形や重力場データと比較可能な、惑星の内部進化を解き明かすための数値モデルを構築することである。数値モデルは(1)熱進化計算と(2)粘弾性変形計算という、二つの要素から構成される。本年度においては、(1)に関して、先行研究で提唱されている混合距離理論を用いた対流の効果を組み込んだ。また(2)に関しては、本年度は相転移の効果を組み込んだ。具体的には、固体・液体の変化を組み込んだ。特に前者に関しては研究例がほとんどない。そのため、比較的単純な惑星モデル(1次元対称一様定常球モデルなど)を用いて、計算コードの妥当性の検証を綿密に行った。より実際の天体条件として、冥王星をモデルにした計算も行った。冥王星を選んだ理由は、(A)氷を主体とした天体で、相転移の影響が計算結果に反映されやすいということと、(B)来年にはアメリカNASAのNew Horizon探査機が世界で始めて冥王星に接近して画像撮影などを行う予定になっており、観測データと比較可能な冥王星の進化モデルが待ち望まれているためである。冥王星の構造についてはほとんど分かっていないため、様々なパラメータ(初期温度や放射性元素濃度など)を広い範囲で振った、パラメータスタディを行った。その結果、冥王星の表面にあると想定される巨大クレータの地形の緩和は、氷マントルの性質よりも、その下にある岩石コアに含まれる放射性元素濃度に敏感であることが分かった。この結果は、探査機によるステレオ地形図から、地下数百キロにおける放射改変熱量の第一次見積りが可能であることを示している。放射壊変熱量は惑星長期進化において最も重量な熱源であることから、冥王星探査において地形決定が非常に重要となることが示された。
2: おおむね順調に進展している
計算コードの主要2パートについて、それぞれ予定された拡張を行ったため。また、それを用いて、将来探査への展望についても、定量的な結果を得ることが出来たため。
本年度の成果を論文という形でまとめるとともに、まだ実装されていないコード拡張を行う。また既に得られている他の天体の地形・重力場データの解析を行い、モデル計算との比較からその天体の進化史を制約していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Geol. Soc. London Spec. Pub.
巻: 401(印刷中)
10.1144/SP401.11
Lunar and Planetary Science Conference
巻: XXXXV ページ: Abstract #1736
巻: XXXXV ページ: Abstract #2449
巻: XXXXV ページ: Abstract #1721
遊・星・人(日本惑星科学会誌)
巻: 22 ページ: 200-206
http://www.cosmo.sci.hokudai.ac.jp/~kamata/