本研究課題「複合架橋型ネットワークを有する超分子ソフトマテリアルの創成」に対し、課題申請時は「共有結合+非共有結合」という組み合わせを用いた分子設計を企てていた。しかし、共有結合を導入した場合、材料の成形・加工に難があり、また溶媒に溶けないため分子特性評価がしにくいなど、様々な欠点が生じた。そのため、申請者は、「複数の非共有結合」の組み合わせによる超分子ソフトマテリアルの材料設計を企て、特にその力学特性に関する研究を行った。 1.架橋ドメイン+水素結合架橋 室温でガラス状態の両末端鎖と水素結合性ユニットをランダムに含む溶融中央鎖から成るABA型のトリブロック共重合体を合成し、末端鎖が形成するガラス状架橋ドメインに加え、橋架け鎖となる中央鎖間にも水素結合性架橋点を有する新規熱可塑性エラストマーを調製した。引っ張り試験により得られた伸長特性を、対照試料である水素結合性官能基を含まないトリブロック共重合体と比較し、水素結合導入による伸長特性の向上を示した。また、動的粘弾性測定と詳細な解析により、その伸長特性の向上は、水素結合架橋点が短い時間スケールで解離・再会合を繰り返し、伸長下での応力集中が防がれるためであると判った。 2.配位結合+水素結合 上記の溶融中央鎖に水素結合を有するABA型トリブロック共重合体に対し、金属塩を添加することで、末端A鎖により形成される架橋ドメイン内で配位結合を形成させ、水素結合と配位結合の複合架橋型超分子ソフトマテリアルを調製した。また、動的粘弾性測定や引っ張り試験により金属塩添加後の力学特性の向上を明らかにし、その原因を小角X線散乱(SAXS)測定や透過型電子顕微鏡(TEM)観察によりモルフォロジーの変化の観点から考察した。
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