研究課題/領域番号 |
13J02360
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 由佳 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 誤嚥性肺炎 / 不顕性誤嚥 / 超音波検査 / スクリーニングテスト |
研究概要 |
不顕性誤嚥は見た目では分からないため画像による気管内部の観察が必要である。これまでの研究において我々は超音波動画像上気管内を通過する誤嚥物質が線状の高輝度所見として観察されること、特徴に基づき誤嚥物質を抽出する画像処理を用いたところ感度82%、特異度81%という結果で誤嚥物質を検出可能であることを報告した。そこで本年度はベッドサイドでの不顕性誤嚥検出のためのスクリーニング方法の開発に向けて誤嚥の検出アルゴリズムの開発と超音波検査による食事摂取時における嚥下機能の縦断観察を実施した。 アルゴリズムの開発においては、嚥下造影検査および嚥下内視鏡検査と同時に超音波検査を実施した17名の患者から得られた42枚の超音波動画像を用いた。ノイズを除去した画像から誤嚥物質と気管壁の候補となる領域についてパラメーターを測定し閾値を設定した。気管壁と誤嚥物質を区別するために特徴に基づいて異なる色で領域を着色させた。このアルゴリズムを利用した処理画像を用いた結果、1名の熟練した評価者による感度・特異度はそれぞれ91%、94%であり臨床看護師6名中4名の評価において嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査の結果との一致率が処理画像を用いない場合に比べ上昇した。 食事摂取時の嚥下機能の縦断観察においては特別養護老人ホームの利用者9名を対象に2週間毎に食事摂取時に超音波検査を用いて誤嚥の有無を判断し食事介助者に報告した。検査時に対象者から苦痛や不快の訴えは無く、超音波検査において誤嚥が観察された者に介助者による食事形態の変更が実施され誤嚥の頻度が減少することが観察された。 誤嚥物質の周辺には気管壁等他の組織が似た形状を持つ高輝度所見として観察されるが開発したアルゴリズムによって誤嚥物質の見誤りが減少し高い感度、特異度での検出が可能であることが示された。また、超音波検査の結果は食事形態を変化させ嚥下機能に影響する可能性が示唆された。(796字)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた誤嚥の検出アルゴリズムの開発において高い感度・特異度が得られたこと、定期的な超音波検査による嚥下機能の観察において次年度以降に計画している超音波検査を用いた介入研究につながる知見が得られつつあることからおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
食事介助者である看護師自身が超音波検査によるスクリーニング方法を実施できるようにするため、位置推定センサを利用した超音波プローブの当て方の客観的な評価方法の確立と誤嚥の検出アルゴリズムを導入した場合の経時的な嚥下機能の観察について評価を行う。開発したスクリーニング方法によってリアルタイムに誤嚥の有無が評価可能であることを示した上で、スクリーニング導入群、非導入群を比較する介入研究においてスクリーニング導入群における有意な誤嚥の頻度と肺炎発生率の低減を示す。
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