研究概要 |
東三省博物館~奉天故宮博物館と満洲国国立博物館を考察対象とし, 博物館と清室財産管理・清朝復辟問題との関連を検討するという研究目的に沿って, 本年度は以下の成果を挙げた。 本年度は, 1936年前後の国立博物館の開館, 奉天故宮博物館の閉鎖を, 満洲国の博物館から清朝の遺制・遺産を排除する動きの具現化だったのではないかとの仮説を検証することを研究計画に挙げていたが, 旧清室財産・清朝復辟と奉天故宮博物館との関連を検討し, 国務院文教部の文書上に示された閉鎖理由と比較することで, 真の閉鎖理由を究明した。その成果は, 「清室財産と清朝復辟-奉天故宮博物館の閉鎖をめぐって-」(共著, 『世界の蒐集』山川出版社)として公にした。 上記考察の過程において, 1914年の瀋陽故宮から北京故宮への文物移管(運京)の実態について追及することが, 中華民国初期の博物館事業の特質解明につながると考え, 移管先の古物陳列所に関する研究に着手した。同時に, 次年度予定している中華民国期の金梁の動向についても, 予備調査に着手した。 また本年度, 科学研究費補助金(研究成果公開促進費)の交付を受け, 『「満洲国」博物館事業の研究』(汲古書院)を上梓した。本書は, 研究対象を満洲国国立博物館~国立中央博物館と東三省博物館~奉天故宮博物館の二館に設定し, 成立するまでの経緯・背景と各博物館の運営者・展示企画者の活動と中国東北の歴史的・地域的特徴との規定関係を分析しながら, 博物館の政治性を明らかにすることによって満洲国の実相を究明したものである。 「旧植民地関係資料」の調査は, 旧高等商業学校である神戸大学(7月8日-9日)と富山大学(9月26-29日)において行った。神戸大学においては満洲国期の博物館関係の新聞資料を収集し, 富山大学においては博物館・博覧会関係の冊子資料等を閲覧・収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的の①に挙げた満洲国期の清室財産管理および復辟問題と奉天故宮博物館(1932-1936)閉鎖理由の解明を行い, 本年度中に共著として公にすることができた。そして, その過程で課題を見つけ, 1914年の文物移管(運京)や古物陳列所の研究にも着手している。旧植民地関係資料の調査も計画通り遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 平成26年度の研究計画に挙げた②金梁の事跡・思想研究(1908-1931)にすみやかに着手するとともに, 文物移管(運京)や古物陳列所の研究を継続する。 本年度, 得られた成果を口頭発表で公にする機会がなかったので, 次年度は口頭発表を積極的に行って近接分野の研究者から意見をもらい, 研究を進めていきたい。
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