研究課題/領域番号 |
13J02367
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
川尻 舞子 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特別研究員(PD)
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キーワード | 性的二型 / QTL解析 / 個体発生 |
研究概要 |
性的二型、即ち雌雄間での表現型の違いは、生物界において広く見られる現象である。しかし、性的二型の進化を考える上で、個体の成長ステージ間のコンフリクトという観点はこれまで見過ごされがちだった。即ち、成体において有利な形質が、性成熟前の個体においても有利であるとは限らない。そこで本研究では、個体の成長を通じて二次性徴形質の発生を追い、最適な個体発生曲線の進化に関わる遺伝的基盤を明らかにすることを目的として、野生メダカをモデルとして研究を行った。まず、性的二型形質(鰭の長さ)に違いのある2集団の野生メダカを交配させてF2を作出し、F2個体の成長を記録した。また、親として用いた野生個体からDNAを抽出して全ゲノムシーケンスを行い、その配列情報からSNPマーカーの作出を行った。そのSNPを用いてF2の成長ステージごとにQTL解析を行い、性的二型形質に寄与するQTLの経時的変化を明らかにした。同時に、個体ごとの発生曲線を直交多項式(Legendre polynomial)を用いて定量化し、QTL解析を行った。その結果、メダカの性的二型形質の発生曲線に関わるQTLは(1)性染色体上にはなく、常染色体上の複数の遺伝子が関わっている。更に、(2)検出されるQTLは発生ステージごとに異なるだけでなく、(3)雌雄間でも異なっているということが明らかになった。このような雌雄および発生ステージ間での遺伝子発現に差異をもたらすメカニズムとしては、性ホルモン依存的な分子経路が関わっている可能性が考えられる。実際に、今回検出できたQTLの近傍領域には、アンドロゲンレセプターや性ホルモン合成系に関わる遺伝子がいくつか見つかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
QTL解析によって候補遺伝子領域を絞り込み、次の実験のための足がかりを得ることができた。QTL解析の結果は、すでに論文にまとめ現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究の結果から、メダカの性的二型形質の緯度間変異には性ホルモン依存的な分子経路が関わっている可能性が強く示唆された。そのため、ホルモン処理実験を行って性ホルモンが表現型に与える影響を調べ、同時に、トランスクリプトーム解析によって、性ホルモンに応答する遺伝子を集団間および発生ステージ間で比較し、顕著に発現差が見られる遺伝子が今回のQTL解析で得られた候補遺伝子領域内にあるかどうかを調べる予定である。それによって、性的二型形質とその個体発生曲線の緯度間変異に関わる遺伝子を絞り込んでいく。
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