研究課題/領域番号 |
13J02371
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
舛本 弘毅 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | ベンゼン / バイオレメディエーション / 電子授受メディエーター / 電気培養 / 代謝経路 |
研究概要 |
本研究の目的は、環境汚染物質であるベンゼンを低コスト・低環境負荷で浄化するため、嫌気条件でのバイオレメディエーションを確立することである。 1. 浄化微生物を効率よく培養する方法を確立することを目的とした、電気培養系の立ち上げ 電気培養法に使用する機器の選定と、電子授受を補佐するために使用する電子授受メディエーターの選定を行った。使用する機器としては、市販されている電気培養装置ではベンゼンの揮発や吸着を防げないため、材質等を考慮して新たにリアクターを設計した。電子授受メディエーターの選定では、数種の候補物質の内、コバルト(II)EDTAと鉄(II)EDTAの添加によりベンゼン分解が促進される効果を観察し、これらの物質を使用できる可能性を見出した。 2. 代謝経路を解明し分解の律速段階を見出すことを目的とした、ベンゼン中間代謝産物検出の検討 ベンゼンの代謝産物を蓄積させる方法として以下二つの方策を検討した。 (1)反応を促進することで、生成物濃度を高める。 ・ベンゼンを高濃度で投与 ・分解促進物質の添加 (2)反応を阻害することで、反応物濃度を高める。 ・代謝経路の阻害物質の添加 ・代謝産物の添加 ベンゼンを高濃度に投与することで中間代謝産物の蓄積が期待できるが、一方で培養系への阻害が考えられる。このため、与えるベンゼン濃度を段階的に引上げ、微生物をベンゼンに馴致させる検討を行った。初期には1.5mMの濃度までしか分解できなかったが、馴致させることで5mMのベンゼンを分解可能な培養系の確立に成功した。また、ベンゼン分解の代謝産物、促進物質と阻害物質の添加による中間代謝産物蓄積の促進を検討した。これらの方法により、ベンゼンの代謝経路下に存在すると考えられる有機酸の蓄積や、未同定ピークの検出が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気培養系の立ち上げに際し、当初目的としていた培養装置の検討・電子授受メディエーターの選定を終えた。代謝産物の検出に関しても、ベンゼン分解反応の反応促進物質、阻害物質や代謝産物を添加することで、代謝産物を蓄積させることが可能であることが示された。今後の研究を進めていく上での下地となる基礎的な検討を進められた。
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今後の研究の推進方策 |
・ベンゼン分解微生物を効率よく培養する方法を確立するため、電気培養を実践に移していく。接続する電極や電位の選定等を行い、電気培養の確立を目指す。 ・代謝産物の蓄積を促す方策を用いることにより、ベンゼンの代謝経路下に存在すると考えられる有機酸の蓄積や、未同定ピークの検出が確認された。しかし、現在用いているHPLC分析では物質同定までは行えないことから、今後は精密質量を測定可能なFTMSを利用してベンゼン代謝産物を同定することを目指す。また同時に、安定同位体でベンゼンを標識することで、検出された有機物がベンゼン由来であることを確認する。
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