本研究はアフリカにおける領域独立(脱植民地化)についての考察を通じて、独立当時の国際秩序と新生国家成立要件との間の相互作用について検討する研究であり、本年度は最終年度にあたる。本年度は主に(1)前年度史料調査に基づく研究成果のとりまとめ、(2)先攻研究整理と理論構築、(3)補足調査による史料収集に注力した。 (1)について、前年度の史料調査をふまえ、宗主国(施政国)、領域内主体、国連加盟国という三つの主体が国連信託統治制度を利用して各々の利益追求を実施していたことを、英仏信託統治領カメルーンおよびトーゴランドに絞り、関係史料精査を継続した。英仏信託統治領カメルーン独立時の英-仏-国連という多主体間の利害調整について分析し、その成果を2014年度日本国際政治学会年次大会にて報告した。 (2)について、国家成立要件の検討という抽象的問題関心を維持しつつ、民族自決権の適用範囲とその決定メカニズムの解明という理論課題へと修正するに至った。この作業は(1)における学会報告提出論文(未投稿)を改善する過程で行われた。具体的には、カメルーンおよびトーゴランドの独立時に実施された住民投票とそれに対する国連監視について、なぜ施政国は民族自決権の適用範囲を恣意的に規定することが可能だったのか、という命題を提示した。同命題への取組みは、施政国間、国連・施政国間、施政国・領域主体間、という多角的視点を持込み、従来の国連研究を相対化する意義がある。 (3)について、今年度は、カメルーンおよびトーゴランドにおける住民投票期日の調整、実施実態、国連総会第四委員会・信託統治理事会・欧州アフリカ構想への英仏政府対応に関する史料を英仏伊の各公文書館で収集した。 本年度の研究は前年度の継続に重きを置きながら、問題設定の精緻化によって理論面での主張を可能とする視点を見いだした。これにより本研究課題の一層の深化・発展に寄与した。
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