研究課題/領域番号 |
13J02393
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤本 大士 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医学史 / 日本近代医学史 / 社会福祉史 / 日米関係史 / 障害の歴史 / アメリカ医学史 / 医療宣教史 / 医療アーカイブズ |
研究実績の概要 |
2014年度は、本研究の基礎的課題である、関係資料の広範な調査を日本・アメリカでおこなった。また、医学史関連アーカイブズに関する論文を執筆し、関連するシンポジウムを主催した。 まず、日本における医学史関連資料がどのような保存・公開状況にあるかをサーヴェイし、本研究課題の遂行にあたって、どのような史料的制約があるかについて検討した。とくに、『国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇』(2015年3月刊行)に投稿した論文は、日本における医学史関連資料は、海外に比べ、病者の実態を明らかにすることができるような資料が少ないことを指摘した。そのため、医学史研究者たちは今後、自らの研究を進めると同時に、広く関連資料を集めていくべきであることを指摘した。この論文執筆と並行して、日本科学史学会生物学史分科会主催の夏の学校「科学史・医学史とアーカイブズ」を主催し、医学史関連資料の保存に関心がある研究者・アーキビスト・学芸員・図書館司書の方などとともに、意見を交換した。 具体的な研究対象としていた身体障害者については、上記の資料調査の結果、対象の選定がやや狭すぎるため、彼ら/彼女らの医療との関わりを示す直接的な資料を十分に発見することができていない状況である。しかしながら、幕末期にやってきた、医者であり、宣教師であった人物たちが、これまで医療ケアの対象に入っていなかった障害者に関心を示し、次第に、彼ら/彼女らに対する医療提供をはじめていたことが、米国・イェール大学での在外研究などを通じて明らかになった。そのため、医療宣教師という、比較的早くから障害者に対する医療ケアをおこなっていた人々の活動に着目することで、本研究課題を今後発展させていきたいと思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究対象とはやや異なるものとなりつつあるが、それによりこれまでの医学史研究上で等閑視されていた医療宣教史というトピックを見出すことができ、また、アメリカ・イェール大学での資料調査を含め、新たな史料を発見できたため、2015年度は研究のさらなる発展がのぞめそうである。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカ・イェール大学での在外研究は2015年8月までを予定しており、帰国後は調査の成果を所属する学会を中心に発表していく予定である。具体的には、日本科学史学会や日本医史学会、あるいは洋学史学会の月例会などでの発表をおこなう。 注目する研究対象は、幕末期以降に日本にやってきたアメリカ人医療宣教師たちであり、彼ら/彼女らが地域医療および地域ケアにどのような貢献を果たしたかを検討していく。具体的には、明治新政府によって国の正統な医学と定められたドイツ医学に対して、アメリカ人医療宣教史たちがどのように対抗しようとしたかに着目する。このとき、従来の医療ケアシステムではカバーしきれていなかった、貧者、女性、子ども、障害者に対して、アメリカ人医療宣教師たちが医療およびケアを提供しようとした姿が明らかになるだろう。
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