研究課題/領域番号 |
13J02414
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小竹 直 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 西洋中世史 / 古英語 / 西洋中世写本 / キリスト教 / ラテン語聖書 / デジタル化 / イギリス |
研究概要 |
本年度は、交付申請書に記載したように、その大部分をロンドン大学における研究にあて、現地にて主たる研究である「ラシュワース福音書」の校定の作業を進めるとともに、関連の写本・資料調査を現地にて行なった。校定本作成に関しては、作業を進めサンプルページなどを作成し、出版社の決定を目指し、各分野の専門家の意見を取り入れるよう連絡体制を強化している。特にOxford English Dictionary編纂に関わるDr Philip Durkinにサンプルページの検討を依頼したところ、好意的な反応と実践的なアドバイスを受けることができた。 国際学術誌Poeticaにて発表の論文では、ラテン語福音書内に見られる古英語訳注釈の問題点を「ラシュワース福音書」の問題とも関連づけながら論じることで対象へのより深い理解を追求した。またStudies in Medieval English Language and Literature掲載予定の書評論文では、ラテン語から古英語への翻訳テクストの編纂方法について、特に原典となるラテン語テクストの問題や古英語ヴァージョン間の異読の校定本内での取り扱い方法など、実践的な側面も含めて検討した。これは、当該書籍の内容を詳細に検証することでその有用性を高めることに貢献するとともに、本研究の主たる研究対象への理解を深めることに結びつくものと考える。またLondon Anglo-Saxon Symposiumで行なった学会発表は、専門家のみならず一般的関心を持った聴衆も対象となったため、古英語時代の英訳聖書について概観をしながらいくつかの特殊な問題をとりあげるというアプローチをとり、研究対象をより幅広いコンテクストで捉えるとともに、アウトリーチについても意識しながら研究を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ラシュワース福音書の校定本作成についてはおおむね予定通り進展している。合わせてより広く関連した内容について調査を進めていくなかで、大小の発見があり、発表決定済み・準備中の論文などで報告していく予定であり、それらについては計画以上の進展があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は特に海外における国際学会にて、主たる研究内容であるラシュワース福音書に関連した問題やより広い視点から関連事項について報告すること軸に、引き続き研究を進めていく。研究拠点は国内の受入研究機関である慶應義塾大学に移るが、昨年度まで滞在したロンドン大学とも連携を保ちながら研究作業を続けていく。学会発表を含め、資料調査など必要に応じて海外渡航を組み入れ、研究環境の変化に柔軟に対応しながら、国際的視野を保って研究を続けていく予定である。
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