研究課題/領域番号 |
13J02418
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
李 豊 神戸大学, 国際文化学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 日中関係 / 日中貿易 / 日中国交正常化 / 友好貿易 / 貿易促進 / 民間交流 / 国際政治 / 中国 |
研究概要 |
本研究は1949年から1972年までの時期における日中貿易促進団体の活動を考察し、日中関係における民間経済交流の役割を論じるものである。今年度は、主にこれまでの研究成果を博士論文としてまとめる作業に専念していた。 戦後から国交正常化までの日中関係は冷戦構造による厳しい国際情勢の影響を受け、国家間の関係が断絶した状態の下で非常に複雑な展開を示していた。中でも、国交のない両国間において展開されていた民間貿易が従来の研究で特に注目されている。しかし、先行研究の論点は両国政府の外交方針や二カ国間関係における国際政治の影響に集中しており、日中間の民間貿易と緊密な関係を持つ貿促団体を主な対象とする実証的研究はほとんど見られない。特に、中華人民共和国が成立した1949年から「LT貿易」が始まった1962年までの日中貿易について、その発端、1950年代前半までの展開、及び1960年に始まった「友好貿易」との関係などに関する具体的な考察は皆無に近いほどである。これらの問題点を解明するためには、政府の外交方針や国際政治の影響という先行研究の視点だけではなく、当時の日中貿易と緊密な関係を持つ貿促団体を中心とする考察も必要である。 そこで、本研究は貿促団体の活動に関する中国・日本・台湾の外交記録、貿促団体の機関紙などに基いて、1949年から1962年までの日中貿易の展開を貿易方式の変化に基づいて区分して先行研究の問題点に注意しながら各時期における貿促団体の発足・再編・活動と日中間の貿易交渉を考察し、両国の貿易関係ないし政治関係における貿促団体の役割を明らかにした。その役割は、主に貿易の成長、中国政府の対日方針の変化、日本政府の対中方針の変化、及び両国民の相互理解の4点にまとめることができる。また、貿促団体とそれを中心とした貿促運動への考察によって、戦後の日中貿易の発端と日本国内の左翼勢力との関係、1950年代に調印された4つの日中民間貿易協定の交渉過程、1960年代初期の「友好貿易」の形成などの先行研究で触れられなかった点も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日中国交正常化以前の日中民間貿易に関する日本外務省の外交記録1200枚、中国外交部の外交档案20万字(手入力)、台湾外交部の外交档案400枚を入手したほか、『日中貿易ニュース』、『調査情報』、『友好と貿易』、『国際貿易速報』などの1952年以降に作成された貿促団体の機関紙200巻を入手してデジタル化にした。また、今年度は大阪、兵庫、静岡、東京在住の4名の貿促団体の関係者に取材を行い、これによって取材を行った関係者の人数は11人まで増えた。 これらの資料に基いて、1949年から62年までの時期における貿促団体の活動とその役割(貿易の成長、中国政府の対日方針の変化、日本政府の対中方針の変化、両国民の相互理解)が明らかになった。 以上の状況から、2013年度の研究実施状況はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、主に1963年から日中国交正常化が実現された1972年までの時期における貿促団体の活動について研究を行う。 資料調査について、①これまで聞き取り調査を行ったことのある元貿促団体の関係者からの情報を収集しながら、より多くの関係者を発見できるように努力する。②既に入手した貿促団体の機関紙における1963年以降の日中貿易に関する内容を整理する。③引き続いて中国外交部、日本外務省、台湾外交部の外交記録を収集して分析を行う。 以上の資料に基づいて、「LT貿易」の実施における貿促団体の役割、文化大革命期の貿促運動、1970年代初頭日本経済界の転向と日本政府の対中方針との関係に関する論文を執筆して積極的に投稿する。最後に、一年目の研究成果を含めて、二年間の研究成果の公刊の準備を開始する。
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