研究概要 |
1. 1,1,4,4-テトラキス(トリメチルシリル)ブタン-1,4-ジイル基を持つボリルラジカルの合成検討 安定ボリルラジカルの合成のために、1,1,4,4-テトラキス(トリメチルシリル)ブタン-1,4-ジイル基のホウ素上への導入を検討した。1,1,4,4-テトラキス(トリメチルシリル)ブタン-1,4-ジイル基を導入したスズ化合物を新規に合成した。そして、それに対して、三臭化ホウ素と反応させホウ素-スズ交換反応を行った。その結果、期待したホウ素-スズ交換反応は進行せず、三臭化ホウ素を1当量用いた場合にはスズ上のメチル基が臭素に置き換わった化合物が得られ、過剰量用いた場合には複雑な化合物が得られた。この結果は、トリメチルシリル基の嵩高さのため三臭化ホウ素が近づけずホウ素一スズ交換反応が進行しなかったと推測された。 2. 15族元素ラジカルの性質解明 Frustrated Lewis Radical Pairとして用いる15族元素ラジカルの性質について検討した。 (1)高周期15族元素ラジカルとその二量体との平衡 アンチモンラジカル(R_2Sb・)およびビスマスラジカル(R_2Bi・)の二量化平衡の熱力学的パラメーターを^1HNMRから求めることに成功した。これまでに、アンチモンラジカルおよびビスマスラジカルの平衡の熱力学的パラメーターを求めた例はなく、これが初めての例であり15族元素化学において重要な知見である。 (2)ホスフィニルラジカルを有する白金錯体の合成と性質 ホスフィニルラジカルを有する白金錯体を配位子交換反応により合成した。分光学測定の結果合成した白金錯体はこれまで報告しているパラジウム錯体と類似の性質を持つことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1,1, 4,4-テトラキス(トリメチルシリル)ブタン-1,4-ジイル基のホウ素上への導入が困難であったため。
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今後の研究の推進方策 |
1,1,4,4-テトラキス(トリメチルシリル)ブタン-1,4-ジイル基のホウ素上への導入が困難であったため、新たにホスフィノ基とアリール基を持つボリルラジカルを設計した。これまでに、ホウ素上へのアリール基やホスフィノ基の導入した例は数多く報告されており、ホウ素上への置換基の導入は可能であると考えられる。また、このボリルラジカルはホスフィノ基のπ供与性とアリール基の電子求引性の効果と嵩高いホスフィノ基の立体保護によってホウ素中心を効果的に安定化されると考えられる。今後は、このボリルラジカルの合成し、ホスフィニルラジカルと組み合わせることでFrustrated Lewis Radical Pairへと展開していく。
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