1.安定ボリルラジカルの検討 ホウ素上にアリール基と嵩高いホスフィノ基を導入したボリルラジカルの合成を検討した。アリール基と嵩高いホスフィノ基を有する還元前駆体であるブロモボランの合成に成功した。ブロモボランから各種還元剤を用い還元反応を検討した。しかし、ボリルラジカルは得られずP-B結合の切断に由来した生成物であるヒドロホスフィンが得られるのみであった。この結果は、P-B結合が弱く還元条件で切断されてしまうためと推測された。 2. 高周期15族元素中心ラジカルの合成と性質 Frustrated Lewis Radical Pairとして用いるヒ素ラジカル(R2As・)の合成と性質について検討した。単離可能なヒ素ラジカルを、クロロアルシンからの一電子還元反応により合成に成功した。合成したヒ素ラジカルは、ESR、紫外可視吸収スペクトル、およびX線結晶構造解析から溶液中、結晶中で単量体であることが確認された。紫外可視吸収スペクトルにおいてヒ素ラジカルのn→4p遷移に由来する451 nmの吸収帯の観測に成功した。これまでに、ヒ素ラジカル(R2As・)の紫外可視吸収スペクトルの観測例はなく、これが初めて例である。
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