研究概要 |
インターロイキン17A (Interleukin-17A, IL-17A)は主にTh17細胞から分泌される炎症性サイトカインの一つで、慢性関節リウマチや乾癬などの疾患の病態に関与している。我々はこれまでに、AD患者の末梢血中のTh17細胞のパーセンテージが疾患重症度と相関すること、また急性期病変部におけるIL-17A産生細胞が慢性期病変部や健常皮膚と比較して増加していることを報告してきた(Koga et al, JID, 128, 2625-2630, 2008)。このことから、IL-17AはADの病態に関与していることが示唆されるが、その詳細なメカニズムは不明であった。そこで、報告者はADにおけるIL-17Aの果たす役割を検討することを目的とし、IL-17A欠損マウス、マウスADモデルを用いて検討を行った。ハプテン反復塗布モデルにおいて、IL-17A欠損マウスは野生型マウスと比較して耳介腫脹の軽減を認めた。さらに、IL-17A欠損マウスは、組織スコアの低下、血清中の抗原特異的IgE/lgGI産生の低下、所属リンパ節でのIL-4産生の低下を認めた。IL-17A欠損マウスの皮膚局所ではTh2誘導に重要なケモカインであるTSLP (thymic stromal lymphopoietin)やCCL17 (TARC)の産生低下を認めた。IL-17Aは、in vitroにおいてTh2細胞のIL-4産生を促進した。このことからIL-17Aがハプテン反復塗布モデルにおいてTh2誘導に促進的に作用していることが示唆された。次に、IL-17A欠損マウスと刊aky tailマウス(C57BL/6にバッククロスしたもの)を交配し、naky tailマウスでのIL-17Aの果たす役割を検討した。Flaky tai1マウスは、フィラグリン遺伝子異常を有し、皮膚炎や血清中のIgE上昇を自然発症するマウスである(Moniaga CS et al. Am J Pathol. 2010)。lL-17A欠損flaky tailマウスは、flaky tailマウスと比較して、皮膚炎の軽減やクリニカルスコアの低下、血清中のIgE産生の低下を認めた。以上から、IL-17AはマウスADモデルにおいてTh2誘導に促進的に作用することが証明された(J Invest Dermatol. 2014 Feb 30)。
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