研究課題
アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis; AD)は慢性的な痒みを伴う炎症性皮膚疾患である。表皮角化細胞に発現するフィラグリン遺伝子の変異とAD有病率に相関関係を持ち、さらに角層の外層部ではフィラグリンの分解産物であるアミノ酸とその誘導体が天然保湿因子(Natural moisturizing factor; NMF)として角層の水分量とpHの維持に働く。多くのサイトカインは,細胞表面のサイトカイン受容体に結合し下流のJAK-STAT経路の活性化を介してその生理作用を発現させる。JAK阻害薬は強力な抗炎症作用を示し,免疫・炎症性疾患の新薬として期待されているが,これまでJAK阻害薬の表皮に対する作用は検討されておらず,バリア機能への効果は不明である。そこで、JAK阻害薬によるTh2サイトカインシグナルの抑制作用が皮膚バリア機能の改善に繋がるとの仮説を立て,表皮角化細胞のフィラグリン産生および皮膚バリア機能に対するJAK阻害薬 (JTE-052) の効果について検討を行った。Th2サイトカイン(IL-4およびIL-13)は,フィラグリンを含む表皮分化関連遺伝子の発現を低下させ、JTE-052を添加することによって,これら遺伝子発現の低下は改善した。さらに, JTE-052はTh2サイトカイン添加により低下したプロフィラグリンタンパクおよびフィラグリン単体の産生を蛋白レベルで促進した。これらの結果は,JTE-052がTh2サイトカインによって抑制される表皮分化を改善させ,フィラグリンタンパクの産生を促進することを示唆する。さらにJTE-052は,免疫不全マウスに移植したヒト皮膚組織に対してもフィラグリン産生を促進した。これらの結果から,JTE-052は表皮角化細胞に作用し,AD患者での低下した皮膚バリア機能を改善する可能性が示された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件)
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