微粒子などの物質の拡散現象は、大気、河川、血管内などあらゆるところでみられる現象である。アクチンネットワーク中に分散する微粒子では、ネットワーク構造によるトラップにより拡散に変化が生じることが実験的に求められている。また、粒子間相互作用の無視できない濃度で微粒子を分散させた溶液にせん断を印加すると、微粒子は流体力学的相互作用によって拡散する。このように粒子の拡散は、周りの媒質や状態の強い影響を受けている。本研究では、増粘性多糖類であるキサンタンガム溶液中に蛍光微粒子を分散させ、せん断を印加したときの微粒子の軌跡を直接計測し、せん断流がキサンタンガム中の微粒子の拡散に与える影響について考察を行った。 微粒子の拡散を評価するために数百個の微粒子の軌跡から平均自乗変位を求めた。y方向のせん断速度0(1/s)の結果では、時間に対する冪指数が1よりも小さくなっており、劣拡散(sub-diffusion)的振舞を示していた。一方で、せん断下では、せん断速度の増加に伴い平均自乗変位の冪指数が1に近づいていくことがわかった。粒子間相互作用のない通常のブラウン運動では、y方向の拡散はせん断流の影響を受けない。そこで、この拡散の変化を考察するために、各せん断速度におけるキサンタンガム水溶液の粘度と平均自乗変位から、アインシュタインストークスの関係式を用いて求めた粘度を比較を行った。その結果から、キサンタンガム水溶液の粘度変化に比べて、微粒子の拡散の変化の方が大きいことがわかった。これらのことから、せん断による拡散の変化はキサンタンガム水溶液の粘度変化ではなく、せん断によってキサンタンガム分子の作る構造からの流体力学的相互作用(非熱的ゆらぎ)による寄与が大きいことが分かった。
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